2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト炎症性腸疾患の発症と慢性炎症の病態形成におけるTSLPの役割
Project/Area Number |
18590679
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡部 則彦 京都大学, 医学研究科, 助手 (50419446)
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Keywords | 免疫 / 内科 / 細胞・組織 / 発現制御 / 病理学 |
Research Abstract |
1.ヒトの炎症性腸疾患の病態形成におけるTSLPの役割を明らかにすることを目的として、炎症性腸疾患患者血清中のTSLP量の測定を行い、活動性炎症性腸疾患ではTSLPの血中濃度が高い傾向を認めた。また、RNA発現解析と免疫組織染色から、炎症腸粘膜局所ではTSLPの発現が増強している可能性が示唆された。 2.腸管上皮細胞株を用いてTSLPの発現調節機構の解析を行った。組織芽細胞や平滑筋細胞では、IL-1βやTNFといった炎症性サイトカインの刺激によりTSLPの発現が誘導されたが、腸管上皮細胞では、炎症性サイトカインやTLRリガンド刺激ではTSLPの発現誘導がおこらず、細菌との直接的な接触にてTSLPの発現誘導がおこり、腸管上皮においては組織芽細胞や平滑筋細胞とは異なる発現調節が行われている可能性が示唆された。 3.TSLP存在下で樹状細胞(DC)に特異的に発現誘導される分子の検討を行い、共刺激分子であるOX40リガンドとOX40の発現がともに誘導されることを見いだした。TSLPによって活性化したDCとCD4T細胞との共培養系にその中和抗体を加えると、naiveなT細胞のみならず、メモリーT細胞の分化増殖誘導も阻害され、OX40-LigandとOX40の相互作用が、TSLPによるDCを介したT細胞の分化増殖誘導において重要であることが示唆された。 4.また、TSLPのみの刺激ではDCからTh1型免疫応答に重要なIL-12の発現誘導が認められなかったが、TSLPとTLRリガンドにて刺激したDCでは、IL-12の発現が誘導されるのみならず、IL-23の発現も誘導された。この共刺激下では活性化DCによって、IL-17産生T細胞への分化誘導がおこり、炎症性腸疾患の病態の深く関わるIL-23の発現を介したTh17細胞分化誘導にTSLPが関与している可能性が示唆された。
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