2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト炎症性腸疾患の発症と慢性炎症の病態形成におけるTSLPの役割
Project/Area Number |
18590679
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡部 則彦 Kyoto University, 医学研究科, 准教授 (50419446)
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Keywords | 免疫 / 内科 / 細胞・組織 / 発現制御 / 病理学 |
Research Abstract |
ヒトの炎症性腸疾患の病態形成におけるTSLPの役割を明らかにすることを目的として、平成18年度に引き続き解析を行なった。ヒト大腸上皮細胞株において、TNF-α刺激にてTSLP発現が誘導され、Th2サイトカインであるIL-4をTNF-αに添加することにより、そのTSLP発現誘導が増強されることを見いだした。TNF-α刺激によるTSLP発現誘導の増強はTh1サイトカインであるIFN-γやTh17サイトカインであるIL-17では生じず、IL-8等の他の炎症性サイトカインとは異なる制御機構が働いていることが示唆された。また、TNF-α+IL-4共刺激による上皮からのTSLP発現誘導は、Toll様受容体(TLR)3リガンドにてさらに増強された。一方、TLR3はDCにも発現しており、TLR3リガンドとTSLPによる共刺激にて活性化したDCでは、TLR3とTSLPに対する受容体が相乗的に発現増強された。そして、TLR3リガンドとTSLPによる共刺激にて活性化したDCにおいて、IL-23の産生が誘導され、このDCとの共培養にて同種naiveCD4T細胞は強い増殖活性を有し、炎症生Th2サイトカイン産生細胞のみならずIL-17産生細胞へも分化誘導された。また、ヒト炎症腸粘膜局所、特に潰瘍性大腸炎の炎症粘膜ではTSLPの発現が増強しており、この発現増強はTh2サイトカインの発現増強のみならずIL-23やIL-17の発現増強を伴っていた。マウスを用いた疾患モデルでの報告において、炎症性腸疾患の発症と病態形成に、IL-23を介したIL-17産生細胞の分化誘導が関与していることが示唆されており、私達の研究結果から、ヒトの炎症腸管粘膜において、TLRリガンド刺激がTSLP発現誘導を介して、炎症性Th2サイトカイン産生細胞のみならず、IL-23を介したIL-17産生細胞の分化をも誘導し炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎の病態形成に関与している可能性が示唆された。また、私達は、ヒトTSLPのDC活性化を介したT細胞の分化誘導での役割を報告してきたが、ヒトT細胞において、naiveな細胞では、TSLPに対する機能的な受容体を発現していないが、T細胞受容体刺激にて、ヒトT細胞上にもTSLP受容体が発現誘導され、T細胞の増殖が増強されることを明らかにした。
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