Research Abstract |
近年,特定のリボソーム蛋白質が,リボソーム以外の場所で翻訳とは独立した役割,extraribosomal functionを持っていることが明らかになってきた.申請者はこれまでにリボソーム蛋白質L13がDNA損傷などのストレスによって活性化されることを報告した.さらにL13がヒト胃癌,大腸癌,肝癌症例において高率に発現上昇しており,その発現レベルが抗癌剤感受性と逆相関することを明らかにした.本研究は癌の悪性度および化学療法効果に関与する候補分子としてのリボソーム蛋白質に着目し,消化器癌組織における全79種類のリボソーム蛋白質の発現プロファイルをもとに従来の評価法を補完する新しい診断・治療予測システムを開発しようとするものであり,以下の成果をあげた (1)消化器癌細胞株における全79種のリボソーム蛋白質の遺伝子発現解析 いくつかの消化器癌細胞株について,さまざまな増殖状態(対数増殖期,無血清による増殖停止期など),あるいはストレスに暴露した際(DNA損傷低酸素)のINAを抽出し,同様に全79種類のリボソーム蛋白質と4種類のリボソームRNAの発現を定量解析した.その結果,細胞増殖の程度,細胞死にともなってさまざまなリボソーム蛋白質遺伝子の発現が変化することを見いだした. (2)p53の機能を調節するリボソーム蛋白質の解析 申請者が同定したp53蛋白の分解を促進するリボソーム蛋白質L13と他の研究者が安定させることを報告したL5,L11,L23,L26について,それらの発現レベルと細胞増殖,抗癌剤感受性との関連性をsiRNAを用いた抑制実験で解析した.その結果,L13がp53蛋白の発現を抑制することで細胞増殖を促進し,抗癌剤抵抗性に関わっていることを明らかにした.また,L13に対するポリクローナル抗体を作成し,DNA損傷に応答してL13が核に集積することを見いだした.
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