2008 Fiscal Year Annual Research Report
知覚神経カルシトニン遺伝子関連ペプチドの胃粘膜恒常性維持と障害修復における役割
Project/Area Number |
18590699
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大野 隆 Kitasato University, 医学部, 非常勤講師 (60185345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬嶋 正隆 北里大学, 医学部, 教授 (70181641)
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Keywords | 胃粘膜恒常性維持作用 / 粘膜傷害修復 / 一次求心性知覚神経 / CGRP / CGRPノックアウトマウス / 潰瘍治癒 / 血管新生 / VEGF-A |
Research Abstract |
カプサイシン(Cap)による胃粘膜傷害抑制作用(胃粘膜恒常性維持作用)にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が重要な役割を持つことを『胃内腔持続灌流神経ペプチド測定法』(傷害面積の評価と胃内腔に遊離されたCGRPを測定)にて証明してきた.今回そのメカニズムを『胃粘膜基底部微小循環観察法』(胃粘膜の微小循環でも最も大切な細動脈,細静脈を観察)で検討した.エタノール(EtOH)胃粘膜傷害は集合細静脈,細静脈の収縮による欝血である.Capをあらかじめ粘膜面に投与してEtOHによる微小循環の変化を調べると,EtOHによる集合細静脈,細静脈の収縮が抑制される.さらにCapのEtOHによる集合細静脈の収縮の抑制に対してCGRPの拮抗薬であるCGRP8-37を観察窓に投与しておくと収縮の抑制は解除され再び収縮が起こった.すなわちCapにより一次求心性知覚神経の軸索反射にてCGRPが遊離され,EtOHによる集合細静脈の収縮が抑制され,欝血が改善するため傷害の抑制が起こると考えられた.またCGRPに血管新生増強作用があることより,その作用が胃潰瘍の治癒に重要な役割をもつのか,CGRPノックアウトマウス(KO)を用いて検討した.方法は,エーテル麻酔下で胃の漿膜面に100%酢酸含有脱脂綿を5秒間あて,潰瘍を作成し,潰瘍の治癒過程を検討した.潰瘍作成2日目ではワイルドタイプ(WT),KOともおよそ35mm2の潰瘍が形成され差は無いものの,KOでは潰瘍面積の縮小は鈍く治癒がWTに比して有意に遅れた.潰瘍の組織標本を作成し顕微鏡観察すると,KOではWTに比して血管新生が強く抑制された.血管新生の評価として潰瘍底部分で血管内皮マーカーのCD31のmRNAと内因性血管新生増殖因子のVEGF-Aの発現量を調べると,KOでは,CD31の発現とVEGF-Aの発現量に有意な抑制が見られた.これにより,少なくともKOで見られた潰瘍治癒の遅延,血管新生の抑制にVEGF-Aが関与していることが分かった.以上よりCGRPには微小循環に対する作用に加え、血管新生増強により粘膜傷害修復を促進する役割を持つことが判明した.
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