Research Abstract |
データベースや過去の文献におけるHBV組み込み部位と本研究によって得られた,慢性肝炎組織6例20クローンの組み込み部位を合わせて解析することにより,異なる肝組織で共通の場所に組み込みが見られるcommon integration siteとして,human telomerase reverse transcriptase(hTERT)遺伝子とMLL4遺伝子が同定された.特にhTERT遺伝子は,過去のデータ解析では,肝癌において約5%に組み込みがあり,この組み込みが慢性肝炎から肝癌に至るどの過程で起こるのかを知るために,慢性肝炎組織20例においてhTERTへの組み込みがあるかどうかを,hTERTに設定したプライマーとHBVのX領域に設定したプライマーを用いて検索した.この方法では,慢性肝炎組織にはhTERTへの組み込みは検出されず,hTERTへの組み込みは肝発癌に近い時期に起こるeventであることが示唆された. また,我々の開発したHBV-Alu PCR法は,肝組織における微量のHBV組み込みを高感度に,迅速に同定できる方法であるが,これを用いて慢性肝炎や担癌肝硬変組織でのHBV組み込みをクローニングし,約40のviral-host junctionを同定した.これら数十のクローン中にも現在の所,hTERT, MLL4やその他のcommon integration siteは見つかっていない. 一方,こうした慢性肝炎組織での組み込みがどのようなコピー数で存在するかを,組み込み近傍の宿主配列とviral-host junctionに特異的なプライマーを作成し,real time PCR法を用いて定量を行った.慢性肝炎組織においては,5-6種類のHBV組み込みが見られ,それぞれのクローンは,肝細胞の1-9%を占めると推測され,慢性肝炎時にすでにオリゴクローナルな細胞の増殖が起こっていることが示唆された.
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