2008 Fiscal Year Annual Research Report
膵線維化の新しい機序の解明と膵癌上皮細胞・間葉系細胞転換誘導に関する研究
Project/Area Number |
18590752
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
清水 京子 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 講師 (90187451)
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Keywords | 膵癌 / 膵炎 / 膵星細胞 / 膵線維化 / 浸潤 / 増殖 / TGF-beta / 貪食 |
Research Abstract |
膵星細胞が膵の線維化のみならず、網内皮系細胞のような貪食能をもつことが前回までの研究で明らかになった。膵癌では膵管閉塞による膵炎を合併することが多く、傷害膵腺房細胞が膵星細胞に貧食されると考えられる。本年度は膵癌における膵星細胞の貪食が、膵癌の悪性度に対してどのような影響を与えるかについて検討した。壊死した膵腺房細胞を貧食した膵星細胞の上清を膵癌細胞株に添加し、膵癌細胞の増殖能、遊走能、浸潤能を検討した。ラットの膵臓から膵星細胞を分離し、膵腺房細胞は48時間培養したのち、膵星細胞に添加し48時間共培養した。膵星細胞と腺房細胞を蛍光標識し、膵星細胞の貧食能を蛍光顕微鏡下で確認した。貪食した膵星細胞の培養液を採取し、遠心後の上清を膵癌細胞株に添加し、48時間後の細胞増殖能、遊走能、浸潤能アッセイをおこなった。培養液中のTGF-beta濃度をELISA法にて測定し、また、培養液中にTGF-beta中和抗体を添加し、膵癌細胞株の増殖能の変化を検討した。傷害された膵腺房細胞を膵星細胞に添加すると、多数の膵腺房細胞が膵星細胞の細胞質内に取り込まれた。貪食した膵星細胞の上清は、非貪食膵星細胞と比較して、Panc-1、Mia-Paca2、BxPcの増殖能を有意に抑制した。Panc-1、BxPc、AsPcの遊走能と浸潤能は貪食した膵星細胞の上清により有意に抑制された。膵星細胞培養液中のTGF-beta濃度は膵腺房細胞の貧食の有無で変化はなく、培養液にTGF-beta中和抗体を添加しても細胞増殖能に変化は認められなかった。以上より膵星細胞は傷害された膵星細胞を貧食し、膵星細胞から遊離したTGF-beta以外の何らかの物質を介して膵癌細胞株の増殖能、遊走能、浸潤能を抑制すると考えられる。
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Research Products
(4 results)