2006 Fiscal Year Annual Research Report
心房細動塞栓症の新規予防法開発に関する研究:心房内皮の視点から
Project/Area Number |
18590795
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Cardiovascular Institute |
Principal Investigator |
山下 武志 (財)心臓血管研究所, 循環器科, 主任研究員 (20302721)
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Keywords | 循環器・高血圧 / 循環器・心房細動 / 循環器・脳梗塞 |
Research Abstract |
1.基礎的研究 心房細動の発症危険因子とされる加齢、高血圧、糖尿病モデルにおける心房内皮障害をtissue factor pathwayinhibitor(TFPI)、thrombomodulin(TM)、eNOS、ならびに炎症機転であるMCP-1という分子発現の視点から検討した。洞調律においてすでに加齢ラットではTFPI、TM、eNOSのdownregulationが生じており、心房細動負荷によりこれらの修飾がより増強した。高血圧ラットではTM発現のみが減少し、糖尿病ラットではMCP-1発現のみが増加しており、病態により異なる心房内皮障害が生じていることが明らかとなった。 一方で、心房細動自身によって引き起こされる心房内皮障害の成因としてRAS系に注目し、AT1受容体格抗薬であるolmesartanの効果を検討した。olmesartanは用量依存的にTFPI、TM、eNOSのdownregulationならびにPAI-1のupregulationを効果的に抑制したことから、心房細動による心房内皮障害にRAS系が深く関与していることが明らかとなった。 2.臨床研究 前向きコホート研究であるShinken Database 2004を用いて、心房細動患者を抽出し脳梗塞発症率の現状を把握した。データベース2412名中、初診時心房細動を呈したものは286名存在した。平均年齢は64歳で、このうち発作性心房細動は58%、持続性心房細動が42%を占めた。平均観察期間約1.5年での死亡は6例、脳梗塞発症は3名であり、予想に反して低い数字となった。これは、患者背景としてCHADS2スコア0~1点という低リスク患者が72%を占めた上、高リスク患者での抗凝固療法施行率が約70%と高い数字であったことに起因していると思われた。本研究は来年度も引き続き実施する。
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