2006 Fiscal Year Annual Research Report
PPARリガンドの抗多核好中球活性を介した血管保護作用の検討
Project/Area Number |
18590825
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
松岡 秀洋 久留米大学, 医学部, 助教授 (80248393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 昌一 久留米大学, 医学部, 講師 (40281026)
梅井 秀和 久留米大学, 医学部, 助手 (90360289)
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Keywords | 炎症 / 血管内皮 / 酸化ストレス / 好中球 / 動脈硬化 |
Research Abstract |
血管内皮細胞はNOをはじめとする多くの生理活性物質を産生し、血管のトーンを調節するばかりでなく血小板凝集粘着抑制・細胞接着分子発現抑制などを通じて血管保護作用を有する。血管内皮機能異常が全ての冠危険因子や動脈硬化病変を有する患者において存在することから、内皮障害機序を明らかにしこれをターゲットとしたストラテジーを立てることが急務とされている。また動脈硬化のセントラルドグマであるresponse to injury hypothesisは局所のプラーク発症機序に留まっており、高リスク患者における全身性の血管内皮機能異常や血管病変の多発に関する病態生理はいまだ解明されてない。最近の血管生物学の進歩により、血管傷害発症成立に単球などの炎症細胞の関与が必須であることが明らかとなった。臨床的にも炎症のマーカーであるC-reactive protein(CRP)が後の心血管病発症を予知するという報告、抗炎症剤アスピリンが心血管疾患の2次予防効果をもつことなどが数多く報告されており、動脈硬化自身が全身的な炎症のプロセスとして捉え直され、臨床的な評価と対策の重要性が指摘されている。 冠危険因子の集簇した病態であるmetabolic syndromeにおいては、血管床やその大小の如何に拘わらず、広範な血管内皮機能異常が存在する。この病態において酸化ストレスやサイトカインの関与が示唆されているものの、そのソースや血管傷害機序の詳細については未だ明らかでない。我々は、循環血中の炎症細胞の中で、最も組織傷害性の強い好中球に着目し、この活性化された炎症細胞が全身を循環することによりmetabolic syndromeにみられる汎血管機能異常が発症するという可能性、即ち「血管内皮-炎症細胞の機能的連関」という全く新しいパラダイムを創出した。我々は高脂血症患者において多核好中球活性が亢進しており、in vivo, ex vivoの何れの系においても酸化ストレスを介して血管内皮機能低下をもたらすことを発見し、健常集団における横断的検討においても活性化好中球由来のmyeloperoxidase(MPO)がmetabolic syndromeにおいて上昇し、他の冠危険因子とは独立した血管内皮障害の規定因子となっていることを認めた。即ち多核好中球活性の亢進が血管内皮障害を通じてmetabolic syndromeにおける心血管病発症に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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Research Products
(11 results)