Research Abstract |
上皮細胞が間葉系細胞に転換する現象epithelial mesenchymal transiton(EMT)は,肝細胞,腎尿細管上皮細胞,肺胞上皮細胞で確認されている。種々因子の関与を除くため,今回はin vitroの培養系,Air-liquid interface(ALI)によるマウス気管上皮の初代培養細胞mouse tracheal epithelial cell(mTEC)を用いた。TGF β1 3ng/mLを添加した群と非添加群の間で経時的な観察を行った。 間葉系細胞マーカーとしてはαSMA,vimentin,desmin,collagen 1,MMP-1を,上皮系細胞マーカーとしてはZo-1,β-catenin,aquporin-5,TTF-1,E-cadherinを検討した。 TGF-βを添加する前には上皮系細胞マーカーが陽性であったが,2週間後の蛍光免疫染色により,これらは発現量が低下〜消失した。一方,間葉系細胞マーカーは2週間後に陽性となった。発現量は1週目,2週目と増加しており,Western blottingによりαSMAの産生増,またβ cateninの発現低下が認められた。 これまでの結果をまとめると, 1.マウス気道上皮の初代培養細胞において,TGF-β1添加によって経時的に,蛍光免疫染色での上皮系細胞マーカーの減少と間葉系細胞マーカーの増加が観察された。また,多重蛍光免疫染色において,間葉系細胞マーカーと上皮系細胞マーカーの同時発現細胞が観察された。 2.ウエスタンブロットにおいても,上皮系マーカーの減少と,間葉系細胞マーカーの増加が認められた。 3.TGF-β添加群の培養上清中には,ELISA法にてMMP-9の増加が認められ,EMTを起こした細胞が,機能的にも働いていることが示唆された。 4.以上の結果から,気道上皮の初代培養細胞においてTGF-β1がEMTを惹起し,この現象はTGF-β1が関与する気道の線維性病変において,病変部に出現する間葉系細胞がEMTに由来している可能性を示唆していると考えられる。
|