2007 Fiscal Year Annual Research Report
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18590882
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸茂 丈史 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 特任教員 (70265817)
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Keywords | 腎臓再生 / 内皮前駆細胞 / アルドステロン / 酸化的ストレス / エピジェネティックス / ヒストン脱アセチル化酵素 |
Research Abstract |
慢性腎疾患では、障害進展因子に対する防御機構が破綻して腎機能の悪化が進むと考えられる。内皮前駆細胞はその防御因子の一つとして働いている。防御機構を刺激させる方法として、外因性に内皮前駆細胞を投与する細胞治療のほかに、内在性の前駆細胞を障害から守り、活性化することも修復機構の活性化につながると考えられる。これまでに我々は、腎臓には体制幹細胞様の性質をもつside population(SP)細胞が存在し、SP細胞を腎不全モデル動物に投与すると、腎機能障害を改善させることを明らかにした。SP細胞は内皮細胞への分化能力も持つ。そこで、薬物によってこうした前駆細胞の保護・活性化が可能かどうか検討を加えた。まず我々は、アンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害薬バルサルタンが腎臓SP細胞を保護できるかどうか検討を行った。腎臓SP細胞は障害腎で38%減少し、造血細胞マーカーであるCD45の発現する分画が有意に増加した。バルサルタンは腎障害の進展を抑制するとともに、障害腎でのSP細胞変化を抑制した。これらの結果によりアンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害は腎臓SP細胞を保護することにより腎臓修復機転を促進させることが示唆された(Eur J Pharmacol 2007, Marumo, et. al.)。 次に、腎障害時には前駆細胞の働きが刺激されると考えられるが、その過程を増強できるか否か慢性腎炎モデルを用いて調べた。エピジェネティック制御薬であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬を慢性腎炎モデルに投与すると、腎炎の進展が抑制されることが明らかになった。HDAC阻害薬が腎臓SP細胞の腎保護因子の発現を上昇させることから、腎炎進展抑制作用にはHDAC抑制による修復機構の活性化が関与することが示唆された(Stem Cells 2007 Imai, Hishikawa, Marumo, et. al.)。
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