2006 Fiscal Year Annual Research Report
腎疾患における低酸素応答機構の解析と血管再生医療の応用について
Project/Area Number |
18590912
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宇都宮 保典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70231181)
|
Keywords | 糖尿病性腎症 / 血管内皮増殖因子 / G-CSF / 骨髄血管内皮前駆細胞 / 血管新生 / 糖尿病性網膜症 |
Research Abstract |
糖尿病性腎症の進展における内因性顆粒球コロニー刺激因子(G-SCF)の役割について 【背景・目的】近年、糖尿病性微小血管症の発症・進展には血管内皮増殖因子の関与が注目されている。そこで、糖尿病性腎症においてG-SCFをはじめとする血管内皮増殖因子の血清濃度と臨床病理所見とを比較し腎障害の進展とその関連性を検討した。 【方法】当科にて腎生検を施行し2型糖尿病性腎症と診断した93例のうち臨床病理所見が十分得られた26例を対象に腎生検時の血清G-CSF、GM-CSF、VEGF、およびエリスロポエチン(Epo)濃度をELISAとRIAにて測定し、さらに腎間質内CD31^+傍尿細管毛細血管(PTC)(/mm^2)を免疫組織にて同定し臨床病理学的所見とを比較した。 【結果】すべての血清サイトカン濃度は腎機能や尿蛋白とは有意な相関を示さなかった。臨床症状では網膜症合併例では非合併例に比し血清G-CSF濃度は有意に高値を示し、Epoは低値を示した。腎組織では球状硬化率と血清G-CSF濃度のみが有意な正相関を示した。さらに、1年後の血清Cr値の増加率が50%未満であった安定群20例では、増加率50%以上の悪化群6例に比し血清G-CSF濃度のみが有意に高値であった。糖尿病性腎症例では微小変化症例に比し間質内CD31^+PTC数は有意に高値を示し間質内における血管新生が促進していたが、血清G-CSF濃度と間質内CD31^+PTC数とは有意な相関を認めなった。 【結語】糖尿病性腎症において糸球体障害の進展に伴い内因性のG-CSF産生が亢進されることが示された。一方、G-CSFは腎内の微小血管新生への影響を介さず、腎機能の保持に関与している可能性が示唆された。なお、本研究は患者本人が承諾の上、実施したことである。
|