2006 Fiscal Year Annual Research Report
アポリポ蛋白E遺子改変マウス脳における酸化ストレスとアミロイドβ蛋白
Project/Area Number |
18590924
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
玉岡 晃 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (50192183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 昭英 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 講師 (40301080)
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Keywords | 老化 / ストレス / 痴呆 / 脳神経疾患 / 内科 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(Alzheimer's disease ; AD)脳の主な病理学的特徴である細胞外に沈着する老人斑や脳血管アミロイドの主要構成成分としてはアミロイドβ蛋白(amyloid β protein ; Aβ)が同定されているが、種々の知見によりAβの脳内沈着はADの発症機序において、第一義的に重要であると考えられている。一方、AD脳においては脂質、蛋白、核酸の酸化的障害が認められ、ADの病態には酸化ストレスが深く関わっていることが示唆されている。最近、AD脳やADのモデル動物脳においてAβの蓄積より酸化物の沈着が先行するという知見が報告され、酸化ストレスがADの病態カスケードにおいてAβ沈着より上流に作用している可能性も示唆されている。一方、ADの原因遺伝子は、早期発症型の常染色体性優性遺伝の家族性AD(familial AD ; FAD)においてAβの前駆体(amyloid precursor protein ; APP)やpresenilin 1(PS1)、presenilin 2(PS2)が同定されているが、このようなFADはAD全体の5%以下であり、その大半は孤発性のADである。孤発性ADの主要な危険因子はアポリポ蛋白E(APOE)の4型(APOE-E4)であることが確立している。APOEは神経の修復や再生時に重要な機能を果たす蛋白であり、ヒトでは3種の型(E2、E3、E4)がみられる。APOE-E4がADを促進する機序は未だ確立したものは無いが、申請者はAPOE-E4のAD脳がE3のものよりも過酸化脂質の増加が認められたことより、酸化ストレスに注目してきた。本研究では遺伝子工学的手法を用いて作成したマウスを用いてAPOEと酸化ストレスとの関係を解析することを目的とした。まず、APOEノックアウト(APOE-KO)マウスを用いてヒト脳と同様な検討を行った。マウスの野生型APOEはヒトAPOE4に相当するものと考えられているが、APOE-KOマウスでは野生型よりも過酸化脂質が有意に増加しており、これはAPOEの抗酸化作用を示唆するものと考えられた。APOE-KOマウスにおいて有意な酸花ストレスの亢進が認められた点より、APOEが抗酸化作用を有する可能性が示唆された。APOE4→酸化ストレスへの脆弱性→Aβの神経毒性増強→神経細胞死促進→AD発症という仮説の合理性は更なる検討に値するものと考えられた。次に、酸化ストレスを生じると考えられる両側総頚動脈をナイロン糸で縛った慢性脳虚血ラット(BCAO)を用いて、免疫組織化学的および生化学的にAβの発現を検討した。免疫組織化学的にBCAO群ではAβが脳組織内、特に皮質において沈着が認められ、IgGの血管外漏出も観察された。サンドイッチELISAにて測定したAβ分子種は、Aβ40、Aβ42ともに、BCAO群の皮質において対照群より有意な増加が認められたが、皮質下組織における有意差はみられなかった。慢性脳虚血におけるAβの沈着には、脳虚血を背景とする脳血管関門の破綻も一要因となっていることが示唆された。今後APOEとAβ沈着との関連も検討していく予定である。
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