Research Abstract |
トランスサイレチン(TTR)アミロイドは,TTRの四量体が単量体に解離し,解離した単量体が変性することにより線維が形成される.我々はまず,既に薬剤として認可されており,ヒトへの臨床応用が可能な低分子化合物の変異TTRに対する四量体安定化作用,アミロイド線維形成阻害作用を,遺伝子組み換えTTRを用いてスクリーニングした.その結果,diflunisalとflufenamic acidが強力なTTR四量体安定化作用とアミロイド線維形成阻害作用を有することを見いだした. 次に37名のFAP患者と対照者の血清を用いて,血清中TTRの安定性を評価した.更に,diflunisalとflufenamic acidをFAP患者の血清に添加し,血清中TTR安定化作用を比較した.その結果,FAP患者の血清中TTRは対照者に比べ有意に不安定であることを見いだした.diflunisalとflufenamic acidの血清中TTR安定化作用に関しては,diflunisalの効果が優れており,diflunisalを添加したFAP患者血清中TTRは対照者の血清中TTRと比較しても有意に安定であった. これらの結果から,信州大学倫理委員会の承認を得た後,diflunisalを用いたFAP患者に対する第二相臨床試験を開始した.具体体には,インフォームドコンセントを得た後,diflunisal 500mg/日を経口投与し,diflunisalの血中濃度,血清TTR四量体に対する安定化作用,臨床症状に対する効果,副作用を検討している.現在臨床試験は進行中で10名のFAP患者が試験に参加しているが,difiunisalは500mg/日の投与量で高い血中濃度(191-253μM)を維持し,FAP患者血清中のTTR四量体を有意に安定化した.副作用は認められていない.治療効果については,更に長期間検討する必要がある.
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