2006 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン受容体基質DoK-1によるエネルギー代謝調節
Project/Area Number |
18590989
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野口 哲也 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (10372640)
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Keywords | 肥満 / 脂肪細胞 / インスリン受容体基質 |
Research Abstract |
downstream of tyrosine kinases-1(Dok-1)は、IRS-1/2に似た構造を持つアダプター蛋白質であり、インスリン受容体をはじめとした種々のチロシンキナーゼの基質として働く。本研究は、Dok-1遺伝子ノックアウト(KO)マウスの解析を通して、個体レベル・臓器レベルでのエネルギー代謝調節におけるDok-1の役割を明らかにすることを目的としている。 成体マウスにおけるDok-1の発現は白色脂肪組織に比較的豊富であり、その発現レベルは高脂肪食の摂取によって著しく上昇した。その一方、KOマウスの白色脂肪細胞のサイズは野生型マウスのそれより小さく、そのためKOマウスは脂肪組織量の減少を呈した。また、糖・インスリン負荷検査やグルコースクランプ法による検討から、耐糖能およびインスリン感受性がKOマウスにおいて増強していることが明らかとなった。さらにin vitroの実験結果から、Dok-1が、ERKの活性を低下させることによって、PPARγの転写活性を負に調節している112番セリン残基(Ser112)のリン酸化を抑制する(すなわちERKによるPPARγの抑制を解除する)可能性を見出した。 Ser112をアラニンに置換した変異型PPARγ(PPARγS112A)はERKによるリン酸化を受けないため、その脂肪分化促進能は恒常的に活性化している。もしKOマウスに見られた脂肪組織量の減少がERKによるSer112のリン酸化に伴うPPARγ活性の低下に起因するなら、このようなPPARγの変異を遺伝的背景に持つKOマウスは肥満誘導に対する抵抗性を示さないはずである。この仮説を検証するために、PPARγS112Aを発現するノックインマウスをKOマウスと交配させた。予備的データによれば、PPARγS112A変異の導入によってKOマウスの痩せの表現型は消失するようであった。
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