2007 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン受容体基質Dok-1によるエネルギー代謝調節
Project/Area Number |
18590989
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野口 哲也 Kobe University, 医学系研究科, 助教 (10372640)
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Keywords | 肥満 / 脂肪細胞 / インスリン受容体基質 |
Research Abstract |
Dok-1はIRS-1/2に似た構造を持つアダプター蛋白質であり、インスリン受容体をはじめとした種々のチロシンキナーゼの基質として働く。本研究は、Dok-1遺伝子ノックアウト(KO)マウスの解析を通して、個体レベル・臓器レベルでのエネルギー代謝調節におけるDok-1の役割を明らかにすることを目的とした。成体マウスにおけるDok-1の発現は白色脂肪組織に比較的豊富であり、その発現レベルは高脂肪食摂取によって著しく上昇した。一方、KOマウスの白色脂肪細胞のサイズは野生型マウスのそれより小さく、そのためKOマウスは脂肪組織量の減少を呈した。また、糖・インスリン負荷検査やグルコースクランプ法による検討から、耐糖能およびインスリン感受性がKOマウスにおいて増強していることが明らかとなった。さらにin vitroの実験結果から、Dok-1が、ERKの活性を抑制することによって、PPARγの転写活性を負に調節している112番セリン残基(Ser112)のリン酸化を抑制する(すなわちERKによるPPARγの抑制を解除する)事実を見出した。KOマウスに見られた脂肪組織量の減少が、ERKによるSer112のリン酸化に伴うPPARγ活性の低下に起因する可能性を調べるため、Ser112をアラニンに置換した恒常的活性化型PPARγ(PPARγS112A)を発現するマウスをKOマウスと交配させた。PPARγS112A変異の導入によって、Dok-1遺伝子の欠損により生じる表現型(体脂肪の減少・白色脂肪細胞の縮小・胎児繊維芽細胞の脂肪分化障害・PPARγ標的遺伝子の発現低下・血中インスリン・レプチンレベルの低下)は全て消失した。以上より、Dok-1がPPARγのリン酸化を修飾することによって、高脂肪食が誘導する肥満(脂肪細胞の肥大化)を仲介することが示された。
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