2008 Fiscal Year Annual Research Report
膵ランゲルハンス氏島と脂肪組織の微小循環調節に関する研究
Project/Area Number |
18590993
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩瀬 正典 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 准教授 (00203381)
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Keywords | 膵臓 / エタノール / 糖尿病 / インスリン / 血流量 / 胎児環境 / ラット / 妊娠 |
Research Abstract |
妊娠期間中の様々な外的、内的要因が胎児に影響し、出生後もその影響が持続し、さらには、成人期の生活習慣病の発症と関連する可能性があることが、プログラミング仮説として疫学研究や動物実験で報告されている。今回が私は妊娠中のエタノール暴露が仔の膵ランゲルハンス氏島血流量、インスリン分泌、耐糖能に影響を与えないかを検討した。 妊娠ラットを購入し、妊娠3日から7日まで3%エタノール、14日まで4%エタノール、分娩まで5%エタノールを投与した。出生直後の体重はエタノール投与群で有意に減少し(5.35±0.01g vs. 5,98±0.13g,p<0,05)、血糖がエタノール投与群で有意に低値であった(26±5mg/dl vs. 81±6mg/dl,p<0.001)。膵重量および膵インスリン含量には有意差を認めなかった。9週齢では、体重に有意差はなかったが、エタノール群の膵重量は対照群より有意に減少していた(1.03±0.03g vs. 1.22±0,04g,p<0.001)。経口糖負荷試験で、エタノール群で負荷後30分の血糖が有意に高値であったが(145±2mg/dl vs. 112±6mg/dl p<0.001)、前値、60分、120分値には有意差を認めなかった。ラ氏島容積、ラ氏島血流量、膵血流量、十二指腸血流量は両群問に有意差を認めなかった。インスリン分泌を詳細に検討するため、ラットよりラ氏島を分離し、バッチインキュベーション法にて検討した。エタノール群で3.3mM glucoseにおける基礎分泌が有意に低下していたが(ラ氏島1個あたり 2.4±0.4μU/hr vs. 3.6±0.8μU/hr,p<0.05)、16.7mM glucose、10mM L-arginine刺激によるインスリン分泌には有意差を認めなかった。一方、ラ氏島インスリン含量はエタノール群で有意に増加していた(692±64μU vs. 542±40μU,p<0.05)。 胎児期のエタノール暴露は出生後の膵の発育を障害し、耐糖能を軽度低下させ、インスリン基礎分泌を低下させた。これらの知見は耐糖能障害の発症機序における子宮内胎児環境の重要性を支持する所見であった。
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