Research Abstract |
尿中F_2-イソプロスタン(F_2-iPs)は酸化ストレスのマーカーとして確立されている。F_2-iPsは4つのシリーズの位置異性体と多数の立体異性体が存在するために,特異的測定法が必要とされる。液クロマトグラフィー(LC)-タンデム質量分析(MS/MS)法による尿中F_2-iPsは報告されているが,LCによる立体異性体の分離及びサンプルマトリックスの影響などの問題が存在する。我々は前年度尿中F_2-iPs測定のための新規多次元固相抽出(MD-SPE)-LC点MS/Ms法を開発した(Zhang B and Saku K. Journal of Lipid Research 200748(3):733-44)。本年度は,酸化ストレスと陰性荷電変性の関連を明らかにするために,心臓病(CHD)危険因子を有する高コレステロール患者において,キャピラリー等速電気泳動(cITP)法によるLDL亜分画(fast-migratingLDL,陰性荷電変性LDLとslow-migratingLDL,正常LDL)と動脈硬化性リポ蛋白(レムナント様リポ蛋白コレステロール,RLP-C,小型化LDL,sdLDL),炎症マーカー(高感度CRP,hsCRP,血小板活性化因子分解酵素PAF-AH)との関連および脂質低下薬スタチン(pravastatinとsimvastatin)による効果を検討した(Zhang B, et. al.Atherosclerosis2008in press)。 1)スタチン投与前,投与後3ケ月,6ケ月に,cITP slow LDLはLDLコレステロール値と正に相関したが,cITP fast LDLはHDL-C値と負に相関し,中性脂肪値,動脈硬化性リポ蛋白RLPCとsdLDL濃度,及び炎症マーカーhsCRP濃度とLDL分画PAF-AH活性と正に相関した。この結果から,cITP法による電気泳動移動度で分画されるLDL亜分画は,組成が異なり,動脈硬化促進作用も異なることは示唆された。 2)低用量水溶性スタチンpravastatinと脂溶性スタチンsimvastatinは,CHD危険因子を有する高コレステロール患者において治療3ケ月,6ケ月後に有意にfast LDLとslow LDLを低下させた。この結果から,スタチン薬はLDL-C値を低下させるだけではなく,動脈硬化惹起性陰性荷電変性LDLも低下させるという新しい多方面作用があることが示された。
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