2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳・神経系における甲状腺ホルモン作用の解析ー海馬などにおける新規標的遺伝子の探索
Project/Area Number |
18591019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 良敬 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (80420363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 善晴 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80174308)
高岸 芳子 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (50024659)
加納 安彦 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (50252292)
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Keywords | 内分泌学 / 甲状腺ホルモン作用 / 海馬 / 甲状腺ホルモン受容体 |
Research Abstract |
甲状腺ホルモンは神経系の発達に不可欠の役割を果たし、胎児期・新生児期・乳幼児期における甲状腺ホルモンの不足は非可逆的な神経系の発達不全を引き起こす。また成人においても甲状腺ホルモンの過不足は脳・神経系の機能に影響を及ぼすことはよく知られており、甲状腺機能低下症患者においては、意欲の低下、物忘れなどのアルツハイマー様症状など、脳・神経活動の低下を示唆する症状が頻見される。しかし、これまでに脳・神経系で同定されている甲状腺ホルモン標的遺伝子は、発達段階では甲状腺ホルモンの制御を受けるものの、成熟段階に入るとその制御が失われてしまうものが多い。本研究では、成獣の海馬において、甲状腺ホルモンがさまざまな遺伝子の発現の制御を介して、細胞・神経系の機能制御を行っているという仮説のもと以下の実験を行った。12週齢(若年成体)♂マウスを甲状腺機能低下状態あるいは甲状腺ホルモン過剰状態としたうえで、断頭屠殺の後、海馬、下垂体などを摘出しtotal RNAを抽出した。このRNAよりcDNAサブトラクション法により、甲状腺ホルモンの過不足により差異的に発現されるcDNAの断片をクローニングした。これら断片の配列から遺伝子を同定した。甲状腺機能低下状態としたマウスに段階的な量の甲状腺ホルモンを含む飲水を与え、これらマウスの海馬において、cDNAサブトラクション法により同定された遺伝子の発現レベルを定量的PCR法により測定した。その結果、成獣マウス海馬において、甲状腺ホルモンによりその発現が有意に変化する遺伝子が10種類以上同定されたが、いずれもその発現の変化は1.5倍程度であった。同定された遺伝子には、カルシニューリンやカルモジュリンなど細胞内カルシウムを介したシグナル伝達に関連するもの、微少管および微少管を介した輸送に関連するもの、シナプス小胞の分泌に関連するもの、またミトコンドリアに関連するものなどが含まれていた。
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