2006 Fiscal Year Annual Research Report
フローサイトメトリーを用いたキメリズム解析による臍帯血移植後の生着不全病態の解明
Project/Area Number |
18591045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 信和 東京大学, 医科学研究所, 産学官連携研究員(特任助手) (10334278)
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Keywords | キメリズム / HLA / 臍帯血移植 / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
近年、臍帯血移植(CBT)は小児同様成人をも対象として増加しているが、生者不全と再発が解決すべき課題となっている。これらの病態ではレシピエント本来の血液細胞が残存もしくは増加し、ドナー細胞(D)とレシピエント細胞(R)が混在する混合キメリズム(MC)状態になるので、MC動態の解析は本病態の早期診断に役立つと思われる。我々は、ほとんどのCBTはDとRのHLAがミスマッチで行われることに着目し、抗HLA抗体とFACSを用いたMC解析法を開発し、移植後患者の検体を解析した。症例は、東大医科研でCBTを受けた造血器悪性腫瘍の患者で、倫理委員会より承認された研究計画を説明して、文書で同意を得た後採血した。DとRにそれぞれ特異的な一組の抗HLA抗体に、移植後早期の生着のモニタリングではlineage抗体を、半年以降の再発の監視では腫瘍マーカー抗体を組み合わせ、末梢血および骨髄細胞を染色してFACS Aria(BD社)で測定した。移植後早期の5症例でMCを解析した結果、1週目には全例で末梢血単核細胞にDとRが検出された。その後4例ではRは減少し、4週目にほぼ消失した。他の1例ではRが2週目に1.5%まで減少した後、3週目以降10%前後で推移した。増加したRは主に単球で、免疫抑制剤の減量により急速に減少した。再発の監視では、6症例で骨髄細胞のMCを解析した。AML-M2の症例[t(8;21)陽性]で、159日目のCD34^+CD45^<dim>(造血幹・前駆細胞および白血病細胞のフェノタイプ)分画中Rは0.2%であったが、281日目には5.7%に増加して再発が疑われた。同分画のDとRをソーティングして白血病マーカーAML1/ETOをFISH法で解析したところ、AML1/ETO陽性細胞はそれぞれ0%と100%であった。本MC解析法は迅速、定量的かつ高感度で、Rの詳細なフェノタイプ解析やソーティングによる細胞生物学的解析も容易であった。本法は生着不全と再発の早期診断に役立つのみでなく、病態メカニズムを解明する上で極めて有力な手段となる可能性がある。
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