2006 Fiscal Year Annual Research Report
白血病の発症、進展に及ぼすNucleophosmin遺伝子変異の分子機構の解析
Project/Area Number |
18591054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清井 仁 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90314004)
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Keywords | 白血病 / ヌクレオフォスミン / 遺伝子変異 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
Nucleophosmin(NPM)は、成人急性骨髄性白血病(AML)の約30%に遺伝子変異が存在し、臨床的にも予後を規定する因子であること、更にNPM遺伝子の発現低下が骨髄異形性症候群細胞(MDS)の発症や細胞分裂の異常に関与していることなどから、造血器腫瘍の中でも特にAMLやMDSの発症基盤を理解する上で重要な分子である。本研究においては、変異NPM分子がAMLとMDSの病態に及ぼす分子機構の解明を第一義にとらえ、NPM分子単独での作用機序のみならず、FLT3に代表されるAMLやMDSに高頻度で遺伝子異常が認められる分子群と協調しての分子機構を中心に解析を進めている。本年度の検討で、下記の研究成果を得た。 1.IL3依存性マウス骨髄前駆細胞株である32D細胞に、正常ならびに変異NPM遺伝子を導入し、安定した細胞株を樹立した。しかし、正常ならびに変異NPM遺伝子発現細胞株両者において、IL3非依存性の増殖能の獲得あるいは、増殖力の差は認められなかった。 2.同様に、正常ならびに変異FLT3発現32D細胞に正常ならびに変異NPM遺伝子を導入してFLT3、NPM共発現細胞株を樹立し、正常および変異FLT3発現下においても変異NPM分子の共発現による細胞増殖力、分化阻害効果への影響は認められなかった。 3.FLT3、NPM共発現細胞株において、作用機序の異なる各種抗癌剤およびFLT3キナーゼ阻害剤添加による細胞増殖抑制効果を比較したところ、変異NPM発現細胞に比較して、正常NPM発現細胞における増殖阻害効果が低いことが示された。 4.AML及びMDS細胞におけるNPM遺伝子発現量とタンパク量を検討し、病期の進行にともない、これら発現量が変化することを確認した。 平成19年度においては、本年度に得られた上記結果の分子生物学的意義についての詳細な検討を予定している。
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