2007 Fiscal Year Annual Research Report
転写コアクチベーターTRAP220による造血幹細胞維持機構
Project/Area Number |
18591061
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 光宏 Kobe University, 医学部, 教授 (50362794)
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Keywords | 転写メディエーター / MED1 / TRAP220 / ノックアウトマウス / 胎児線維芽細胞 / 造血幹 / 前駆細胞 / 細胞増殖 / アポトーシス |
Research Abstract |
TRAP/メディエーター複合体はRNAポリメラーゼIIホロ酵素複合体の構成成分であり、アクチベーターによる広範な転写の活性化に必須の基本的なコアクチベーター複合体である。220kDのサブユニットTRAP220/MED1は核内受容体の他にも幾つかのアクチベーターによる転写活性化に重要な役割を担うことが明らかにされつつある。造血器におけるMED1の役割について、私達はこれまでに末熟白血球の核内受容体依存性の分化成熟にMED1が重要であることを報告したが、本研究では造血のニッチにおいてMED1が造血幹細胞/前駆細胞の支持のシグナルに重要な役割を担うことを示した。 胎児線維芽細胞MEFは造血幹/前駆細胞の支持能を持つことが知られ、造血ニッチのモデルになる。そこでノックアウトマウスを用いて、同系同腹のMED1欠損MEFと野生型MEF(コントロール)による正常マウス造血細胞の支持能を比較した。短期間の培養では、MED1欠損MEF上の造血細胞数がコントロールに比べて著減していた。そこで細胞増殖とアポトーシスを測定したところ、MED1欠損MEF上の骨髄細胞でS期が遅延しDNA合成量が低下しており、同時にアポトーシスが有意に少なかった。即ち、MED1欠損MEF上では細胞増殖と細胞死がともに少なかった。次に6〜8週間の長期培養後にコロニー形成能を検討したところ、再現性よくMED1欠損MEF上の細胞による造血細胞コロニー数が有意に減少していた。また、MED1欠損MEFにMED1を導入して同様の実験をしたところ、造血細胞のコロニー数が回復した。以上の結果より、造血ニッチにおいてMED1は造血細胞の増殖刺激シグナルと造血幹/前駆細胞支持のシグナルの発現を同時に担うことが強く示唆された。本研究は基本的転写コアクチベーターが造血ニッチに何らかの役割を担うことを示す始めての知見である。
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