Research Abstract |
本研究は多発性骨髄腫の発生,治療抵抗性の原因として注目されている骨髄微小環境における腫瘍細胞増殖・保護作用の機序を解明し,それに基づいた新たな治療法開発の基礎となることを目的とする。 骨髄微小環境は細胞外基質,骨髄ストローマ細胞,造骨細胞,破骨細胞などからなり,多発性骨髄腫の発生に関与するのみならず,骨髄腫細胞と細胞外基質やストローマ細胞などとの接触,あるいは,接触により誘導されるサイトカインによる増殖促進,抗アポトーシス作用により薬剤耐性の一因となっていることが徐々に明らかになりつつある。そこで本研究では,まず,骨髄腫細胞とストローマ細胞との接着がサイトカイン産生に与える影響について検討した。すなわち,多発性患者骨髄単核球を長期培養して得られたストローマ細胞と骨髄腫細胞を48時間混合培養し,上清中のサイトカイン濃度の変化をサイトカインアレイにより測定した。その結果,IL-6,VEGF,MCP-1などが共培養により増加することが判明した。また,この共培養系に骨髄腫治療に従来用いられているデキサメサゾンを添加してもサイトカイン産生は抑制されず,サイミジン取り込み法により,骨髄腫細胞の増殖が抑制されないことが判明した。いっぽう,従来の治療に抵抗性となった骨髄腫にも有効性が示されている,サリドマイドやポルテゾミブをこの系に添加すると,サイトカイン産生が抑制されるばかりか,骨髄腫細胞の増殖も抑制されることが示された。現在新たな化合物について検討している。 本研究を継続し骨髄微小環境の腫瘍保護・増殖促進に関係する新しいメカニズムを明らかにすることによって,シグナル伝達因子をターゲットとした分子標的療法や,細胞表面抗原を対象とした抗体の開発など新しい有効な副作用の少ない治療法開発の基礎となることが期待される。
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