2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗リン脂質抗体症候群における血栓形成機序に関する研究
Project/Area Number |
18591096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渥美 達也 北海道大学, 北海道大学病院, 講師 (20301905)
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Keywords | 抗リン脂質抗体 / 血栓 / ホスファチジルセリン / プロトロンビン / β2-グリコプロテイン / lipid scramblase / 組織因子 |
Research Abstract |
易血栓性を特徴とする自己免疫疾患、抗リン脂質抗体症候群(APS)の血栓形成には複数の機序が複雑に絡み合っている。報告者は、APSの病原性抗体である抗β2-グリコプロテインI抗体や抗プロトロンビン抗体が単球や血管内皮細胞を活性化して、外因系凝固反応のイニシエータである組織因子などの向血栓物質を誘導することを示してきた。 報告者は、本年度単球細胞系のTHP-1およびRAW276.3細胞をインターフェロンαで処理し、モノクローナル抗β2GPI抗体であるWBCAL-1、およびホスファチジルセリン依存性モノクローナル抗プロトロンビン抗体(aPS/PT:ループスアンチコアグラントの主要な責任抗体)である231Dを、それぞれβ2-グリコプロテインIあるいはプロトロンビンの存在下で培養した。インターフェロンαの前処置により単球の発現する組織因子量は著しく増加した。この活性化には細胞質を構成するリン脂質のうち細胞内側に存在するホスファチジルセリンを外側へ能動的に輸送するlipid scramblase 1が重要な役割を演じていると考えられた。すなわち、抗リン脂質抗体の対応抗原であるβ2-グリコプロテインIもプロトロンビンも、細胞表面のホスファチジルセリンへ結合することによって抗リン脂質抗体の反応の場を形成する。lipid scrablase 1がインターフェロンαによって誘導され、ホスファチジルセリンの細胞表面密度が増加することによって抗リン脂質抗体のaccesibilityが増幅され、血栓傾向が高まると考えられる。このことは、APSのあらたな治療標的としてlipis scramblase 1が候補にあげられる。
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