2007 Fiscal Year Annual Research Report
関節リウマチのS100A8/A9タンパクによるマクロファージ活性化機構の解明
Project/Area Number |
18591111
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
山村 昌弘 Aichi Medical University, 医学部, 教授 (80252956)
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Keywords | 関節リウマチ / マクロファージ / S100A8 / A9タンパク / サイトカイン / シグナル伝達 |
Research Abstract |
関節リウマチ(RA)の関節滑膜におけるマクロファージの活性化持続には、腫瘍壊死因子(TNF-α)を頂点とする炎症性サイトカインカスケードの形成が重要である。S100タンパク質ファミリーは細胞内に分布し、多様な細胞機能を調節する陽イオン結合性タンパク質群であるが、活性化により細胞外に分泌あるいは放出され、サイトカイン様活性を発揮する。平成18年度に、RA滑膜マクロファージにおけるヘテロ二量体S100A8/A9ペプチドの過剰発現、およびS100A8/A9によるマクロファージのTNF-αなど炎症性サイトカインの発現誘導を明らかにした。平成19年度は、マクロファージにおけるS100A8/A9受容体とS100A8/A9の炎症性機能に関与するシグナル伝達経路を解析した。 1)糖化最終産物受容体RAGEおよびCD36のS100A8/A9に対する受容体機能の検討:成熟CD16+マクロファージと単球系株THP-1細胞の膜分画のウエスタンブロット法によりRAGEおよびCD36表面分子の発現を確認した。S100A8/A9によりCD16+マクロファージおよびTHP-1細胞を刺激し、抗RAGE中和抗体、esRAGE(内因性分泌型RAGE)、抗CD36抗体存在下におけるTNF-αなどのサイトカイン産生を検討したが、いずれも阻害することはできなかった。 2)S100A8/A9シグナル伝達経路の解析:cDNAアレイ法による検討では、CD16+マクロファージおよびTHP-1細胞において、S100A8/A9活性化によりJAK/STATシグナル伝達系、NF-κBシグナル伝達系、MAPシグナル伝達系に関与する主要分子mRNAの発現が増強した。そこで、S100A8/A9刺激したCD16+マクロファージとTHP-1細胞の細胞質と核内蛋白を経時的に抽出し、シグナル伝達分子の活性化をみた。ゲル移動度シフト法により、NF-κBとAP-1の核内移行が検出された。また、免疫沈降法により回収されたIKKα/β、 ERK1/2、 JNK1、 p38タンパク質のリン酸化を認めた。しかし、STAT系の有意な活性化は検出できなかった。さらに、TNF-α産生へ対するNF-κBとMAPシグナル伝達系の特異的阻害剤による影響を検討し、S100A8/A9によるマクロファージ活性化にはNF-κBおよびp38キナーゼが重要であることが明らかとなった。 以上のことから、マクロファージのS100A8/A9受容体は明らかにはできなかったが、S100A8/A9は主にNF-κBおよびp38MAPキナーゼの活性化を介してサイトカイン産生を誘導することを解明した。
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Research Products
(3 results)