2007 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待の世代間伝達防止のための小児及び育児中の家族レジリエンスに関する研究
Project/Area Number |
18591145
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
関 秀俊 Kanazawa University, 医学系研究科, 教授 (60171328)
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Keywords | 児童虐待 / 養育態度 / セルフエスティーム / 自己愛 / 家族機能 |
Research Abstract |
虐待の原因には母親の自己愛の肥大化がることも指摘されており,その背景には虐待環境で育ったことによることが多いと考えられている。そこで,高校生を対象にセルフエスティーム(SE)と自己愛などの自己評価とこれまでの養育環境との関連を調査した。調査内容:(1)基本属性(2)SE(3)自己愛(4)両親の養育態度(受容的態度,過同調的態度,支配的態度)(5)養育者への親和性(6)家族機能(7)経験(8)コミュニケーションスキル(9)友人関係(表面的関係,対人恐怖,攻撃性,他者軽視)。 結果:両親のこれまでの受容的養育態度はSEと正の相関がみられ,過同調的態度は自己愛の誇大性および過敏性と正の相関がみられた。また支配的養育態度は,SEと負の相関があり,過敏性と正の相関がみられた。養育者への親和性はSEと正の相関があり,過敏性と負の相関がみられた。自己のネガティブな経験はSEと負の相関,過敏性と正の相関がみられ,またコミュニケーションスキルは過敏性と負の相関がみられた。表面的な友人関係や対人恐怖は,SEと負の相関があり,過敏性と正の相関がみられた。また友人関係における攻撃性や他者軽視は,自己愛の誇大性、過敏性と正の相関がみられた。高校生において,これまでの両親の受容的な養育態度はSEを高めるが,過同調的な養育態度や支配的な養育態度は自己愛の誇大性または過敏性を高めることが明らかになった。さらに,自己愛の過敏性が高い場合は,友人関係が表面的または攻撃的になるが,一方SEはこのような不適切な友人関係を改善する重要な役割を果たしていることが示唆された。これらのことより,青年期の問題行動や育児期での子ども虐待を防ぐためには,過敏性や誇大性が過度に増大する自己愛を制御する必要があり,またSEも高められる受容的な養育態度や環境が重要であると考えられた。
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Research Products
(2 results)