2006 Fiscal Year Annual Research Report
担癌マウスにおける免疫抑制状態の解析とその回避による腫瘍ワクチン増強効果の検討
Project/Area Number |
18591241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柴垣 直孝 山梨大学, 大学院医学工学総合研究部, 助教授 (40262662)
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Keywords | ワクチン / 免疫療法 / 樹状細胞 / 抗原提示 / タンパク抗原 |
Research Abstract |
陽性に帯電するペプチド群(cationic polypeptide)を含有するタンパク質は、陰性に帯電する細胞膜に素早く結合した後endocytosis, macropinocytosisとして高効率に細胞内に導入される。過去我々はこの原理を利用し、抗原タンパクにcationic polypeptide (polyarginine ; R9)を含有させた融合タンパクを作製しex vivoで樹状細胞に導入させることで抗原エピトープをMHC class I, class II上に提示させこれを皮内接種することで強力な抗原特異的免疫反応を誘導させるワクチン療法の有用性を報告した。その際、担癌状態の宿主では、正常な免疫反応の誘導が起こり難いこと、特にCD4陽性T細胞の活性化抑制が関与することを同定した。以上の結果は担癌宿主の免疫抑制にはCD4陽性細胞が関与しており、これを強力に活性化することで免疫抑制を転換させうる可能性を示唆している。一方、R9含有OVA融合タンパクを担癌状態のマウス皮内に直接接種し、樹状細胞によるワクチン効果と比較検討したところ、タンパク直接接種群のほうがより高い抗腫瘍効果を認めた。この機序につき解析したところ、抗原特異的CTL活性化能は樹状細胞を用いた場合より低いものの、CD4陽性T細胞活性は非常に高くなること、活性化されたT細胞はTh1型であることが判明した。さらにR9含有OVAをnaive miceに皮内接種した場合、接種部位へ長時間高濃度を維持したまま滞在すること、また同部位の細胞MHC class I上に抗原エピトープを発現させることが明らかとなった。また、この反応はCD8陽性細胞を除去することで完全に消失することより、非特異的な炎症反応によるものでないことを明らかとした。これらの結果は、R9含有タンパク質を皮内接種すると接種局所の細胞内に導入されること、また接種する抗原の免疫原性が高い場合、接種部位を反応の場とする強い免疫反応が誘導され組織が破壊されることを示している。
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