Research Abstract |
Prolactinは脳下垂体より分泌されるホルモンであるが、皮膚にも存在し、細胞性・液性免疫を修飾するケミカルメディエーターとして機能し、尋常性乾癬の病態を調節する可能性がある。尋常性乾癬患者の表皮ケラチノサイトでは、type 1T細胞の浸潤を促すケモカインCXCL9,CXCL10,CXCL11の産生が元進している。CXCL9,CXCL10,CXCL11の産生には転写因子NF-κB, STAT1,IRF-1が関与する。本研究では、ヒトケラチノサイトのCXCL9,CXCL10,CXCL11の産生に対するprolactinの作用を検討した。ケラチノサイトにおいて、prolactinは,IFN-γに誘導されるCXCL9,CXCL10,CXCL11の蛋白放出とmRNA発現およびIRF-1 mRNA発現を促進し、NF-κB, STAT1,IRF-1の転写活性を増強した。JAK, p38 MAPK, MEKの阻害剤は、CXCL9,CXCL10,CXCL11,IRF-1の産生と、NF一κB, STAT1,IRF-1の活性化を抑制した。ProlactinはERK, JAK2のリン酸化を、IFN-γはp38MAPK, JAK1,JAK2のリン酸化を誘導した。Prolactinは、MEK依存性に、IκBαのリン酸化,NF-κB p65のセリンリン酸化を誘導した。ProlactinおよびIFN-γはJAK依存性に、STAT1のチロシンリン酸化を誘導した。ProlactinあるいはIFN-γは、それぞれMEKあるいはp38 MAPK依存性に、STAT1のセリンリン酸化を誘導した。以上の結果から、Prolactinはケラチノサイトにおいて、IFN-γと協調し、JAK2/STAT1およびMEK/ERKシグナルを誘導してNF-κB, STAT1,IRF-1を活性化し、CXCL9,CXCL10,CXCL11の産生を促進することが示唆される。Prolactinはこれらのケモカインを介して尋常性乾癬病変部へのtype 1T細胞の浸潤を誘導すると考えられ、尋常性乾癬の治療の標的として重要である。
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