2006 Fiscal Year Annual Research Report
メラノサイト及びメラノーマ細胞の分化におけるBMPとKITの役割と関係
Project/Area Number |
18591261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
川上 民裕 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (20297659)
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Keywords | 神経冠細胞 / メラノサイト / BMP / Kit / Kitl伝達系 / マウス神経冠培養系 / noggin / メラノブラスト / 悪性黒色腫 |
Research Abstract |
我々はこれまでメラノサイトの発生由来とされるマウス神経冠細胞(neural crest cells, NCC)を培養系として使用してきた。このNCCからNCCmelb4(NCC由来メラノサイト前駆細胞株)、NCCmelan5(NCC由来成熟メラノサイト細胞株)、NCCmelb4M5(NCC由来未熟メラノサイト細胞株)を確立し、メラノサイトの分化や増殖、メラニン色素生成、発癌メカニズムに関わる様々な因子を検討し、報告してきた。NCCmelb4はKIT,チロシナーゼ関連蛋白(TRP-1、TRP-2/DOPAクロムトウトメラーゼ;DCT)陽性であるが、チロシナーゼ、ETRB、DOPA反応は陰性を呈する。一方、NCCmelb4M5はKIT陰性を呈し、TRP-1、TRP-2陽性で、チロシナーゼ、ETRB、DOPA反応は陰性である。NCCmelan5はKIT、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、ETRB、DOPAすべてが陽性を示す。電子顕微鏡により、NCCmelb4、NCCmelb4M5ともにメラノソームはstage I、電顕DOPA陰性、チロシナーゼ活性陰性を示す。以上より、NCCmelb4M5株は最も幼弱なメラノサイトであり、移動することのない神経上皮細胞から活発に移動するNCC細胞(後のメラノサイト)への最初の段階に相当すると推測される。NCCmelb4はKIT発現があることから、NCCmelb4M5がより分化した次の段階にあたる。NCCmelan5は成熟したマウスメラノサイト細胞株といえる。 BMP(Bone Morphogenetic Protein)は、生体の発生や形態形成、アポトーシスに重要な役割をする。初期発生に始まり、その後のほとんど全ての器官形成に関与する。BMPのシグナル伝達は様々なアンタゴニストにより制御され、特に細胞外ではNoggin, Chordin, Follistatinにより受容体への結合が阻害される。一方、細胞内においては転写因子Smad群、特にSmad1,Smad5,Smad8がリン酸化され、そのシグナルが伝わっていく。 以上のことを踏まえ、今回の研究で、NCCmelb4M5細胞はBMP4添加により細胞増殖能は抑制を受け、KITは蛋白レベル、mRNAレベルとも誘導された。BMP4によるこれらの作用は、nogginの大量投与で相殺された。より生体に近いin vitro primary cultureで、BMP4添加はKIT陽性細胞を増加させた。まとめると、BMP4はそのシグナル伝達系を介して、最も幼若な分化段階のメラノサイトで、KIT発現に関与していることが示唆された。すなわち、BMP4は、KIT依存直前のメラノサイトに重要な因子の可能性がある。
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