2008 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病の神経細胞変性における興奮毒性に関する研究
Project/Area Number |
18591272
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水上 勝義 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (20229686)
|
Keywords | アルツハイマー病 / 海馬 / 神経細胞変性 / GABA受容体 / 興奮毒性 |
Research Abstract |
本研究では、アルツハイマー病(AD)の神経細胞変性に興奮毒性が関与するという仮説に基づき、とくに抑制性神経伝達系のGABA受容体の障害が、AD脳における神経細胞変性に関与することを検証した。 対象と方法:AD患者と対照群の剖検脳海馬の薄切切片を用いて、GABA受容体γサブユニットに対する特異抗体を用いた免疫組織化学的検討を行い、神経原線維変化に関する染色(X34)を用いて重染色した。 結果:海馬の神経細胞は、GABAA受容体のγサブユニットの免疫反応性が陽性であった。AD脳では、AD病変に抵抗性を示す神経細胞(アンモン角のCA3やCA2領域)においてγサブユニットの反応性が増強した。一方AD病変に脆弱なCA1領域の神経細胞では、γサブユニットの反応性は低下した。またγサブユニットを失った神経細胞には神経原線維変化が形成された。 考察:本研究の結果から、GABAA受容体γサブユニットを維持あるいは増強する神経細胞では、神経変性が生じにくいことが示唆され、γサブユニットに神経保護作用があると考えられた。またγサブユニットを失うと、GABA受容体の正常機能が保てなくなり、興奮毒性が亢進し神経原線維変化の形成などの神経変性が惹起される可能性が推察された。本研究は、GABA受容体が神経原線維変化の形成に1関連する可能性を世界で初めて示唆した、非常に意義のある研究である。本研究結果は、GABA受容体がADの治療薬のターゲットになりうることを示している。
|
Research Products
(1 results)