2006 Fiscal Year Annual Research Report
内在性神経幹細胞活性化によるうつ病治療-神経回路網修復促進機構の解析-
Project/Area Number |
18591301
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30301401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
山田 美佐 国立精神・神経センター, 研究員 (10384182)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / うつ病 / 神経幹細胞 / 抗うつ薬 / 神経新生 / 小胞体ストレス / 培養細胞 |
Research Abstract |
うつ病の病態基盤を神経回路網構築過程の障害の観点から検討し、神経回路網構修復機構における神経幹細胞の役割を解析する目的で、神経幹細胞の分化機能の変化や小胞体ストレス応答機構の検索およびこれに対する抗うつ薬の影響について検討した。小胞体におけるカルシウム動員の阻害剤であるタプシガルギンおよびヌクレオシド系抗生物質で糖鎖付加の阻害剤であるツニカマイシンを用いた小胞体ストレス曝露(0.1〜1μM)により神経細胞の生存は濃度依存的に障害された。この小胞体ストレスの影響下では抗うつ薬パロキセチンは神経細胞障害に影響を及ぼさなかった。一方、神経細胞の生存に影響のない低濃度(0.01μM)の小胞体ストレス曝露により、神経幹細胞から神経細胞への分化は有意に抑制され、神経幹細胞の分化の過程は神経細胞の生存に比べて、より小胞体ストレスの影響を受けやすいと考えられた。低濃度(0.01μM)の小胞体ストレス曝露による神経幹細胞から神経細胞への分化抑制は、抗うつ薬の併用処置により濃度依存的に軽減された。蛍光顕微鏡にても、小胞体ストレス曝露による分化抑制と、抗うつ薬による分化能の回復が確認された。また、小胞体ストレス薬剤および抗うつ薬(フルオキセチン・パロキセチン・アミトリプチリン)が分化神経細胞における小胞体ストレス蛋白質GRP78の発現変動に及ぼす影響をWestern Blot法を用いて解析し、0.01μMの小胞体ストレス曝露によるGRP78の発現の増強と、抗うつ薬併用処置によるGRP78発現の抑制を認めた。我々は既に抗うつ薬処置による神経幹細胞でのBDNF産生増加を認めているが、本研究では新たに、BDNFが神経幹細胞の分化における小胞体ストレスの影響を軽減することを確認し、抗うつ薬とBDNF両者が示す神経幹細胞分化促進作用において、小胞体ストレス軽減作用が重要な役割を果たす可能性が示された。
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