2007 Fiscal Year Annual Research Report
内在性神経幹細胞活性化によるうつ病治療-神経回路網修復促進機構の解析-
Project/Area Number |
18591301
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
橋本 恵理 Sapporo Medical University, 医学部, 准教授 (30301401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
池田 官司 北海道文教大学, 人間科学部, 教授 (30232193)
山田 美佐 国立精神・神経センター, 老人精神保健部, 研究員 (10384182)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / うつ病 / 神経幹細胞 / 抗うつ薬 / 神経新生 / 小胞体ストレス / 培養細胞 |
Research Abstract |
うつ病の病態基盤を神経回路網構築過程の障害の観点から検討し、神経回路網構修復機構における神経幹細胞の役割を解析する目的で、昨年度の抗うつ薬による小胞体ストレス応答機構に関する研究成果に基づき、神経幹細胞内のシグナル伝達系変化および転写因子調節機構について検討した。MAPキナーゼカスケード上の分子ERKの活性化型分子p-ERKの神経幹細胞における発現は、タプシガルギンを用いた小胞体ストレス曝露により著明に減弱した。また、MAP kinase kinaseであるMEK(MAPK/ERK kinase)の阻害剤U0126の処置により神経細胞への分化は抑制され、神経幹細胞の分化の運命決定に重要な影響を及ぼす転写因子NRSF(neuron restrictive silencer factor)のDNA結合活性の増強を認めた。タプシガルギン処置時にはNRSF蛋白質量の増加が認められ、小胞体ストレスによる神経幹細胞の神経分化抑制作用にERKシグナルの減弱を介した転写因子NRSFの関与が示唆された。さらにモデル動物への標識神経幹細胞の移植によりin vivoの神経幹細胞動態解析を試み、脳内での分布動態を確認した。これらの知見を参考に内在神経幹細胞活性化による治療法の開発を目指し、神経幹細胞への抗うつ薬処置時の神経細胞フェノタイプの発現変化について検討した。分化後の神経細胞フェノタイプの割合は処置した抗うつ薬によって異なるが、セロトニン神経やGABA神経に加えアセチルコリン神経への分化が強く認められた。抗うつ薬の臨床効果の違いがこれらのフェノタイプ発現の差異に基づく可能性があることが示唆され、内在性神経幹細胞活性化治療の実現化の際に重要となる視点が明らかとなった。
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