2008 Fiscal Year Annual Research Report
拡散テンソル解析を用いた老年期うつ病の認知症移行予測因子の同定
Project/Area Number |
18591312
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
下田 健吾 Nippon Medical School, 医学部, 講師 (30277529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 善朗 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20213663)
木村 真人 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50186334)
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Keywords | 老年期うつ病 / 認知障害 / 認知症 / 白質変化 / 拡散テンソル / 形態画像 |
Research Abstract |
老年期のうつ病が,認知症の前段階に高頻度でみられ,認知障害を呈する症例に移行例が多いことに注目し,うつ病の白質変化をみることで,認知症に移行する特徴が同定される可能と仮説を立てた。本年度も前年同様、日本医科大学千葉北総病院および日本医科大学付属病院に通院中の認知障害を伴ううつ病の追跡調査を行い、軽度認知障害、アルツハイマー病患者とともに拡散テンソルMRI解析を行った。得られたデータから認知障害を伴ううつ病の病態をみるために、認知障害を伴ううつ病(10例)アルツハイマー病(AD群)(10例)および軽度認知障害(MCI群)(6例)における白質変化を拡散テンソル解析から得られたFA(拡散異方値)を用い比較検討した。結果は認知障害を伴ううつ病およびADでは脳梁膝部におけるFA値の低下が一致しているが、うつ病では前方領域、ADでは後方領域のFA値の低下がみられた。よって脳梁膝部の白質変化が両者の認知障害の病態に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。また経過観察をした症例で、認知障害を伴ううつ病11例(うち認知障害がうつ病の寛解後6ヶ月持続している認知症移行群(converter:conv)6例、認知障害が改善した非移行群(nonconverter:non-conv)5例)NINCDS/ADRDAのprobableAD10例,対照群(上記疾患に該当しない病院内対照)6例についても白質変化を比較検討した。その結果、うつ病の重症度が高いこと、脳梁膨大部の白質変化が大きいことが認知症の危険因子であることが同定された。白質変化から認知症への移行を同定することが可能であるという仮説を実証したこと、認知障害を伴ううつ病が一部ADと共通の病態がみられることを見いだした意義は大きく、本研究の発展から、新たなうつ病の病態や治療戦略が構築できる可能性がある。
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Research Products
(3 results)