Research Abstract |
肝細胞癌とその境界病変の悪性化における血管新生を検討した。癌化に伴う血管の変化をvascular endothelial glowth factor(VEGF)とその受容体(Flt-1,Flk-1),hypoxia inducible factor-1,CD34,α-SMAに関して,外科的に切除された20例のDNと36例のHCCを用いて検討した。類洞の毛細血管化はHCCにおいてびまん性に見られたのに対し,DNでは主に門脈域周囲に見られた。こうした毛細血管化した領域はしばしば異常筋性血管,腫瘍性肝細胞の門脈域への浸潤,そして鍍銀線維の消失に関連しており,特にB群やC群ではA群に比べて有意に間質浸潤,鍍銀線維の消失に強い相関が見られた。VEGFはDNやHCCにおける腫瘍性肝細胞においてびまん性に発現しており,DNよりもHCCでその発現レベルが高い傾向にあったが有意差はなかった。DNにおけるほとんどの症例では,FIk-1とHIF-1αがそれぞれ,門脈域周囲の毛細血管化した領域における内皮細胞と腫瘍性肝細胞に発現していた。結論として,VEGF,FIk-1,HIF-1αの発現レベルが上昇することが,類洞毛細血管化や異常筋性血管数の増加に関与していると考えられた。塞栓物質による血管新生阻害剤の効果を検証する前実験として強力な血管新生作用を有するbasic Fibroblast Growth Factor(bFGF)を肝に直接注入することで肝内脈管(動脈,門脈)の新生、誘導がおこりうるかどうかを検討した。担体としてゼラチンハイドロゲル粒子(Gelatin Hydrogel Microspheres;GHMs)を用いた。結果は肝実質への注射針の刺入および粒子の注入によって引き起こされた肝実質の変化が想像以上に大きく,これを払拭することが技術的に困難であり,bFGFによって引き起こされたであろう微細な変化の評価は不可能であった。
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