Research Abstract |
平成20年度は,胸部写真全体,肺尖部,心陰影部,右下肺,上縦隔部,などの5つの生体の指紋情報(biological fingerprints, BFs)を使用した画像検索法の開発を行なった.この方法では,まず紛失した画像と同じ患者の過去に撮影した画像から5つのBFsを抽出し,画像データベースに含まれる全ての画像のBF sとの相関値を計算して,それらの合計を相関指標とした.つぎに,相関指標の高い画像から順に並べて紛失した画像を検索した. 開発した手法の性能を評価するために,データベースの中からランダムに選び出した200枚の画像(男性100,女性100)を仮想的な行方不明の画像とし,大量の画像を含む画像データベースの中から行方不明の胸部X線写真を検索した.5つのBiological fingerprintsを利用し,200枚の行方不明の画像を36,210枚の中から検索した結果,行方不明の画像とその患者の過去に撮影した画像との相関指標が,データベースの中で最も高い値を示した割合は78.5%(157/200)であった.この結果は,開発した手法を利用することで,行方不明の胸部X線写真の約3/4を自動的に探し出すことが可能であることを示している.さらに,相関指標の上位10位を行方不明の画像の候補として選び出して,これらの中から探し出せば,さらに10.5%(21/200)の画像を見つけ出すことが可能であった.しかし,残る11%については,開発した手法の有用性を示さなかった. ファイリングミスの発生の原因の多くはヒューマンエラーである.したがって,ファイリングミスを完全になくすることは困難である.このような状況を考慮すると,本研究で開発した患者固有の画像情報を利用した画像検索システムは,電子化が進められる医療画像システムにおいて必須である.
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