Research Abstract |
腫瘍内におけるTS(thymidylate synthase)の高発現が腫瘍増殖能の亢進を引く起こすこと,更にTSは5-FU系抗腫瘍剤の標的分子であり,TS高発現が5-FU抵抗性の要因であることを我々はみいだした(Nakano et al, Br J Cancer 2006).そこで,我々はTS高発現の固形癌患者に対する5-FU系抗腫瘍剤の増感療法として,TS発現抑制ベクターと5-FUの併用療法の研究を行っている.まず,ヒト癌細胞株におけるTS発現を,real-time quantitative RT-PCRで測定したところ,特に肺腺癌細胞株であるA549とMAC10がTS高発現細胞株であった.次にTS発現抑制に最適なsiRNA(short interfering RNA)配列を決定するために,TS遺伝子に対する合成siRNAを3種類作製した.そして,リポフェクション法でこれら合成siRNAをA549細胞にトランスフェクションし,real-time quantitative RT-PCRでTS遺伝子発現を定量し,Western Blot法でTS蛋白発現を定量した.その結果,HROOC-257072AのsiRNAによるノックダウン効率が最も高かった.そこで,shRNA(short hairpin RNA)発現プラスミドベクターを作製するために,このHROOC-257072A配列を元に,センス配列とループ配列,アンチセンス配列を含むshRNA配列を設計した.そしてヒトU6プロモーターを搭載したpBAsi-hU6 DNAプラスミドベクターに,このshRNA配列を組入れ,TS抑制shRNA発現プラスミドベクターを作製した.リポフェクション法で,このTS抑制shRNA発現プラスミドベクターをA549細胞にトランスフェクションしたところ,TS発現の良好な抑制がみられた.更にこのshRNA発現プラスミドベクターからヒトU6プロモーターとshRNA配列を切り出し,COS-TPC法でTS抑制shRNA発現アデノウィルスベクターを我々は作製した.このTS抑制shRNA発現アデノウィルスベクターの濃縮・精製を行っており,担癌ヌードマウスによる遺伝子治療実験で,5-FUとの併用療法について追加検討してゆく.
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