Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90344994)
朝長 毅 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (80227644)
野村 文夫 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80164739)
島田 英昭 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (20292691)
須永 雅彦 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10361437)
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Research Abstract |
HLA遺伝子はその遺伝子産物(HLA抗原)の構造の違いからクラスI遺伝子,クラスII遺伝子に分けられるが,発現もHLAクラスI抗原が全有核細胞であるのに対し,クラスII抗原はBリンパ球,活性化T細胞,マクロファージ,血管内皮,および,免疫学的に賦活化されたある種の上皮細胞等と限られている。その機能にも違いが見られるが,いずれにおいても重要なのはHLA抗原分子の細胞外ドメインにペプチドを結合させてT細胞に提示する事で,T細胞はT細胞受容体(TcR)でHLA抗原分子に提示されたペプチドを認識し,それに基づいて免疫系の賦活化が引き起こされる。外来抗原の場合は,HLAクラスII抗原で提示される(HLA拘束性)。癌に対する免疫応答性がどの様に起こっているかに関してはまだ解明されていない点が多いが,免疫監視機構からの逸脱にHLA抗原系の発現異常が関与していることは容易に推測できる。癌化に伴って通常では発現のなかったクラスII抗原(特にHLA-DR抗原)の発現が見られる事も知られており,HLA-DR抗原がインターフェロンγ,TNF-α等のサイトカインによって発現誘導がなされる事からこの発現が局所の免疫賦活程度を反映していると考えられ,HLA-DR抗原の発現と癌進展との関わりが調べられている。THlタイプのサイトカインには強い抗腫瘍効果があり,実際にこれらのサイトカインを誘導するアジュバントを用いた癌治療の臨床試験が開始されている。これらの事実は癌細胞に発現するDR抗原が,直接担癌患者の治療反応性や予後に関連している可能性をも示唆している。本研究では大腸癌細胞に発現するDR抗原発現を解析して,同抗原の発現と大腸癌周囲組織中のIFN-γやTNF-αの存在とに関わりのある事を見いだし,癌におけるDR抗原の発現と癌の転移,進行度とについて調べ報告する。今回さらに大腸癌症例の約10年間の長期フォローアップを行い,長期予後について調べた結果を述べ,現在得られているDR抗原と腫瘍進展についても考察した。
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