2007 Fiscal Year Annual Research Report
上皮-間葉転換した消化器癌に対する免疫応答の解明とそれを標的とした臨床応用の検討
Project/Area Number |
18591484
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桜井 敏晴 Keio University, 医学部, 助教 (20101933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 千恵 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90424126)
塚本 信夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20407117)
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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Keywords | ラマン分光 / 子宮頸癌 / 細胞診 / コルポスコピー |
Research Abstract |
昨年度までに、細胞が可動性を獲得する「上皮-間葉転換(Epithelial to MesenchymalTransition,EMT)」を生じた膵癌細胞は、転移・浸潤能が増強されると同時に、免疫制御性T細胞(Treg)の免疫抑制活性を担う転写因子FoxP3を発現するCD4^<+>T細胞を増加させることを見出した。今年度はそのTreg誘導機序をさらに詳細に解明するために、まずはヒト末梢血由来白血球を種々の細胞分画に純化し、これを単独または組み合わせて、恒常的にEMT様性状を呈するヒトsnail強制発現膵癌細胞株と共培養した。その結果、CD^<+>T細胞単独ではFoxP3発現が増強されないが、そこにCDIlc^<+>細胞を加えると顕著に増強されることが分かった。またsnail^<+>癌細胞株と共培養したCDIlc^<+>細胞について詳細に解析するとsnail-親株との共培養時に比較し、T細胞共刺激因子の発現の低下と、免疫抑制性分子PD-Llの発現増強が示された。これらのCDIl^<+>細胞はT細胞増殖能を有意に低下させており、またこれらと共培養した新CD4^<+>T細胞にFoxP3発現が誘導されることが分かった。 一方、GeneChip解析により同定した、snail発現に伴って発現が増強される因子に対する特異的中和抗体をこれらの共培養系に添加したところ、CD4^<+>T細胞におけるFoxP3発現や免疫抑制性CDIlc^<+>細胞の誘導が強く抑制された。さらにこれらの抗体は、癌細胞の浸潤能をも同時に強く抑制することも示された。以上の結果から、EMT変化を生じた癌細胞は、それらの因子を介して周囲の抗腫瘍免疫反応を抑制するとともに、自らの転移をより一層増強している可能性が示された。つまり、snailのようにEMT上流に位置する分子を標的とした治療法が、癌患者で高率に見られる癌転移と免疫抑制の両者を同時に阻害できる可能性が見出された。
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Research Products
(2 results)