2007 Fiscal Year Annual Research Report
拡大肝切除の安全性向上を目指した細胞内シグナルの人為的修飾に関する研究
Project/Area Number |
18591497
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
打波 宇 Akita University, 医学部, 助教 (40400486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 正毅 秋田大学, 医学部, 助教 (90372325)
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Keywords | 肝臓外科学 / ストレス応答 |
Research Abstract |
拡大肝切除を安全に行うためには、肝血流遮断に対する耐用時間を延長させ、出血量を可及的に減少させる事が重要である。この命題を果たすため、生体が本来持ち合わせている自己防御遺伝子を制御する転写因子、Nrf2を人為的に活性化させることにより、肝臓自身の虚血に対する脆弱性を克服し、肝虚血再灌流障害に対する耐性獲得を目的とした。Nrf2を活性化させる薬剤として0Itipraz, Diallyl sulfide (DAS),15-Deoxy-delta prostaglandin J2(PGJ2)を用い、肝上皮細胞におけるNrf2の活性化を蛍光免疫染色で確認したところ、いずれの薬剤もNrf2の核移行をもたらした。さらに分離した肝星細胞においてもPGJ2刺激によるNrf2の核移行、制御遺伝子であるheme oxygenase-1(H0-1)の発現が確認された。また、PGJ2で刺激を受けた星細胞ではalpha SMAやタイプ1コラーゲンの発現および細胞増殖が抑制された。これらのPGJ2の効果は抗酸化剤であるNACによって消失した事から、酸化ストレスがNrf2の活性化た重要であると思われた。次にマウスを用いて尾静脈からPGJ2を投与し、その3時間後に70%領域の肝虚血再灌流を行い、肝障害を評価した。再灌流3時間後の血清GOT, GPTはコントロール群で3509,2817であったが、PGJ投与群では876,922と著明に抑制されていた。また、TUNEL染色でアポトーシスを評価すると、やはりPGJ投与群で抑制されていた。PGJ2がもたらす肝虚血耐性獲得機序が、Nrf2を介した星細胞の活性化・増殖抑制効果に起因した、虚血再灌流時の肝微小循環障害の改善によってもたらされることを示唆する結果も得られつつある。今後、PGJ2前投与が肝虚血再灌流障害への対策のみならず、硬変肝の治療にも応用できる可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)