Research Abstract |
胆道屈癌に対する拡大肝切除は,術後肝の不全の誘因となりうる.術前の正確な残存肝予備能の把握と術後肝不全の早期予知およびその防止は臨床上きわめて重要な課題である. われわれは,大量肝切除ラットモデルおよび閉塞性黄疸ラットモデルを用いてビリルビンおよび胆汁酸代謝や有機アニオントランスポーター(ntcp, oatp, Bsep, Mrp2, Mrp3)の発現の変化を検討してきた.これらの結果は原著論文(J Surg Res 2006;134:81-86)(Hepato-gastroenterology2009; in press)として発表し,また主要な学会(第105回日本外科学会,第60回日本消化器外科学会)で発表してきた. 1)閉塞性黄疸ラットモデルでは,胆管閉塞によりMrp2, Bsep, oatpおよびntcpの発現低下とMrp3の発現亢進が認められた.1週間の閉塞性黄疸後,胆汁外瘻あるいは内瘻により胆管閉塞を解除すると発現が低下していたMrp2は亢進し,発現が亢進していたMrp3は低下した.胆汁外瘻と内瘻を比較すると内瘻の方が有意にMrp2の発現亢進とMrp3の発現低下が認められ,内瘻による減黄の有用性が示唆されている. 2)術後急性肝不全モデルとして大量(90%)肝切除ラットモデルを用いた肝予備能評価をおこなった.術後48時間の生存率は90%肝切除群は50%,70%肝切除群は100%であった.90%肝切除群は70%肝切除群に比べて術後早期(6時間)に胆汁流量および胆汁中胆汁酸排泄の有意な低下がみられた.また90%肝切除群と70%肝切除群との問で肝切除術後の有機アニオントランスポーターの発現変化の様式が異なり,90%肝切除群ではMrp3のmRNAおよび蛋白の発現低下を認め,70%肝切除群との間に有意な違いを認めた.これらの結果から肝切除術後の胆汁流量や胆汁酸排泄量の変化,有機アニオントランスポーターの発現の変化が術後肝不全発症を早期に予知するうえでの指標となる可能性が示唆された. また,臨床面においても進行胆嚢癌における肝切除範囲(術式)と予後との関係を解析し,進展度別の至適術式について原著論文(J Gastrointest Surg2007;11:1025-1032)として発表した.
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