2007 Fiscal Year Annual Research Report
吸入発癌物質・クロム酸塩の暴露による肺癌の発癌過程の解明-修復遺伝子hMLH1とgene instability-
Project/Area Number |
18591551
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
近藤 和也 The University of Tokushima, 医学部, 教授 (10263815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝沢 宏光 徳島大学, 医学部歯学部付属病院, 講師 (90332816)
鳥羽 博明 徳島大学, 医学部歯学部付属病院, 医員 (40403745)
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Keywords | クロム肺癌 / DNA修復遺伝子 / gene instability / 前癌病変 / 発癌過程 |
Research Abstract |
私たちの以前の研究で、クロム酸塩に暴露したクロム工場労働者の肺癌はgene instabilityの頻度が高く、DNA修復遺伝子hMLH1の蛋白発現が低下していることを報告した(Mol Carcinogenesis33:172-180、2002、42:150-158、2005)。今回の研究で、クロム工場労働者の前癌病変で、hMLH1の蛋白発現が低下があるかどうか、を検討した。1983年吉澤らは、肺癌の検診目的にて、83名のクロム工場の労働者に気管支鏡を施行した(四国医学雑誌40:123-,1984)。その生検材料から異型上皮3例、扁平上皮化生14例をクロム酸塩に暴露した前癌病変(クロム群)とした。肺癌の精査で蛍光気管支鏡を施行した重喫煙者の生検材料(carcinoma in site2例、異型上皮3例、扁平上皮化生7例)をクロム酸塩に暴露していない前癌病変(コントロール群)とした。hMLH1の蛋白発現の検討は、抗hMLH抗体(300倍希釈)にて免疫染色(Catalyzed Signal Amplification system)した。顕微鏡下に、腫瘍細胞200個のうち、核染している腫瘍細胞数を計測し、スコア化した(None(0%)、Scant(<35%)、Moderate(35%〓、〓70%)、and Diffuse(>70%))。None、Scant、Moderate群をhMLH蛋白の発現低下とした。クロム群におけるhMLH蛋白の発現は、None群:2例、Scant群:8例、Moderate群:5例、Diffuse群は2例であった。コントロール群における発現は、None群:0例、Scant群:0例、Moderate群:5例、Diffuse群は7例であった。hMLH蛋白の発現低下率は、クロム群では88%(15/17例)、コントロール群では42%(5/12例)であり、クロム酸塩に暴露した前癌病変では有意にhMLH1の蛋白発現が低下を認めた。今回の実験結果からクロム酸塩に暴露した肺癌における発癌過程として、DNA修復遺伝子hMLH1の蛋白発現が低下→遺伝子不安定性が高くなる →癌関連遺伝子の異常→発癌が強く示唆された。
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Research Products
(2 results)