Research Abstract |
当初の計画通り,SDラットの大槽に自家動脈血を注入し,脳血管攣縮モデルを作成した.脳血管攣縮の評価は脳血管撮影を施行しておこない,脳血管攣縮の経時的変化をグラフ化した.次いで,くも膜下出血後の静脈血および脳脊髄液中の細胞外マトリックス蛋白であるテネイシンC濃度をELISA法を用いて経時的に定量し,脳血管攣縮との関連を評価した.脳脊髄液中のテネイシンC濃度は血腫注入直後にピークとなり,その後,漸減したが,その値は脳血管攣縮の程度と相関し,脳血管攣縮が高度な程,高値を示した.一方,血液中のテネイシンC濃度は脳脊髄液とは異なる経時的変化を示し脳血管攣縮発生時にピークを示したが,やはり脳血管攣縮の程度と相関し,脳血管攣縮が高度な程,高値を示した.そこで,脳血管撮影後にラットを安楽死させ,脳および脳動脈を採取し,HE染色とテネイシンCに対する免疫染色の2重染色をおこなった.その結果,テネイシンCは正常の脳底動脈の外膜で軽度に染色されるが,くも膜下出血後,その程度は著明に増強されることが明らかになった.さらに,脳血管攣縮を高度に起こした脳底動脈壁では,外膜だけでなく,平滑筋層や内膜でもテネイシンCは高度に染色された. くも膜下出血後の静脈血および脳脊髄液中のテネイシンC濃度はヒトでも検討し,ラットと同様の経時的変化を示し,脳血管攣縮例で有意に高値を示すことが明らかとなった. 以上より,テネイシンCが脳血管攣縮の病態に関与している可能性がはじめて明らかとなった.今後,テネイシンCの発現量を変化させるなどして,さらに詳細にテネイシンCと脳血管攣縮の間の因果律などについて検討する予定である.
|