Research Abstract |
頭蓋縫合早期癒合症の遺伝子異常については,fibroblast growth factor receptor(以下FGFR)遺伝子を中心に,その変異が報告されている。今回,表現型より症候群性頭蓋狭窄症と考えられた計8例について,FGFR2,FGFR3遺伝子について解析を行った。その結果,頭蓋縫合早期癒合・水頭症・両側肘関節の円性癒合を認め,Pfeiffer症候群type2と考えられた1例において,FGFR2遺伝子に異常を見いだし,その遺伝子型はTry290Cys(1049:G→T)であった。現在までにFGFR2遺伝子のTry290Cys変異に関する報告は9例程あるが,その表現型は重症のPfeiffer症候群であるとされ,今回の症例もこれを支持する結果となった。我々はFGFR遺伝子異常が同一であっても,その表現型は大きく異なり得ることを報告してきているが,Try290Cysのような特定のFGFR遺伝子変異に関しては,表現型と遺伝子型に相関が見られることが示唆された。 また,FGFR2遺伝子に異常を確認し,かつ10年以上の経過観察したCrouzon症候群10例,Apert症候群6例について,手術時の年齢,手術法,手術回数についてretrospectiveに検討した。その結果,Crouzo症候群では,初回手術が1歳以下のものが,5/10例,また,複数の手術を要した例は5/10例であった。7/10例はcysteineに関連した変異であった。これに対し,Apert症候群では,6例全例が生後6ヶ月以内に初回手術を必要とし,また全例で3〜6才時に再手術が行われていた。遺伝子型は,Ser252Trp:4例,Pro253Arg:2例であった。Apert症候群の方がCrouzon症候群より,早期にかつ複数回の頭蓋形成術を要する傾向にあり,遺伝子型が治療経過にも影響していると考えられた。
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