2007 Fiscal Year Annual Research Report
中枢性塩類喪失症候群の発現機序:脳損傷後の低ナトリウム血症の病態について
Project/Area Number |
18591615
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
森 達郎 Nihon University, 松戸歯学部, 講師 (00318437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 容一 日本大学, 医学部, 教授 (00125048)
川又 達朗 日本大学, 医学部, 准教授 (20234122)
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Keywords | くも膜下出血 / 塩類喪失症候群 / 低ナトリウム血症 / ラット / 血管貫通モデル |
Research Abstract |
初年度(18年度)の研究結果より血管貫通によるラットくも膜下出血(SAH)モデルの作成はほぼ確立することができた。血管貫通によるSAHモデルは高い死亡率が問題となるが、開頭操作が加わらないこと、作成直後の急激な頭蓋内圧の上昇、そして動脈損傷によるSAHであることからより臨床に近いモデルといえる。作成から6時間の尿量ならびに尿中ナトリウム排泄量の増加はSAH群で有意に増加しており、また血清ナトリウムは作成前の基礎値と比較して2日目から低下を認め4日目にはSAH群で有意に低下した。体重もSAH群で有意に低下を認めたことから、本モデルにおける病態はナトリウムの過剰排泄に伴う循環血漿量の低下、すなわち塩類喪失症候群と考えられた。ナトリウム利尿ペプタイドは塩類喪失症候群の発現機序の原因と考えられているが、本研究結果からはそれを裏付ける結果は得られなかった。むしろ心房性ナトリウム利尿ペプタイド(ANP)はsham群に比較して有意に低下していた事実は循環血漿量の低下に伴う生体の恒常性維持に働いた結果と考えられた。鉱質コルチコイドが持つナトリウムの再吸収作用は塩類喪失症候群によるナトリウムの排泄と尿量の増加を抑える効果が臨床応用されており、ラットSAHモデルにおいても尿量増加ならびにナトリウムの排泄を抑えることが可能であった。 今後は中枢性塩類喪失の発現機序となる分子生化学的なアプローチに加えて、治療指針ならびに治療薬として、鉱質コルチコイドを強く発揮する薬理学的なアプローチが課題となってくる。
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