2006 Fiscal Year Annual Research Report
変形性関節症の治療を目指したWntシグナルによる軟骨分化制御機構の解明
Project/Area Number |
18591655
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深井 厚 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20422298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 修一 東京大学, 医学部附属病院, 医員 (80401066)
原 慶宏 東京大学, 医学部附属病院, 医員 (00422296)
三浦 俊樹 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20376479)
河野 博隆 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20345218)
緒方 直史 東京大学, 医学部附属病院, 客員教員 (10361495)
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Keywords | 古典的Wntシグナル / 変形性関節症 / 軟骨肥大分化 / TCF / LEF-1 |
Research Abstract |
軟骨分化および肥大化制御におけるWntシグナルの役割の解明と、変形性関節症における古典的Wntシグナルの役割解明を目的とし、はじめに古典的Wntシグナルの転写因子であるTCF/LEF-1の構成的活性型変異体・抑制型変異体アデノウイルスを作成した。作成したアデノウイルスの蛋白発現をウエスタンブロットで確認した。さらにアデノウイルスをTCF/LEF-1の結合部位を持つレポータージーンとともに細胞株(C3H10T1/2)に導入し、発現させたTCF/LEF-1の機能をルシフェラーゼ活性で確認したところ、これらより作製したアデノウイルスが正常に機能・発現していることが確認された。作成したTCF/LEF-1の構成的活性型変異体、抑制型変異体を発現するアデノウイルスをマウス軟骨細胞株ATDC5およびマウス胎児肋軟骨細胞へ感染させ、mRNAを回収し、リアルタイムRT-PCR法で軟骨肥大分化マーカー(X型コラーゲン、オステオポンチン、アルカリフォスファターゼ)の定量解析を行った。この際、ATDC5細胞をin vitroで肥大化させるのに二次元培養では限界があったので、軟骨が肥大分化する生理的に近い条件であるアルジネートビーズを用いた三次元培養を行い、解析した。その結果、TCF/LEF-1の構成的活性型変異体の導入によって、軟骨肥大分化マーカー発現が上昇し、抑制型変異体の導入によって軟骨肥大分化マーカー発現が抑制された。さらに軟骨肥大分化の指標として肥大分化マーカーの検出のみでなく、細胞の形態学的変化についても薄切標本を作製し観察した。その結果、肥大分化マーカーの発現上昇と相関して、顕微鏡下で細胞の肥大化が観察された。TCF/LEF-1の構成的活性型変異体による軟骨肥大分化促進効果は、GSK3βを抑制することによって古典的Wntシグナルを活性化させるLiClの投与によっても同様の結果が得られた。これらの結果より、古典的Wntシグナルの活性化は軟骨肥大分化に関与することが示唆された。次に古典的Wntシグナルと他の重要な軟骨分化シグナルとの相互作用の解析を行った。まず、代表的な軟骨分化シグナルであるSox9に着目して、古典的WntシグナルがSox9シグナル依存性に軟骨分化・肥大分化を促進しているかを解析するためにSox9ノックアウトES細胞を用いた。ES細胞は、胚様体を形成してからTCF/LEF-1の構成的活性型変異体・抑制型変異体のアデノウイルスを導入し、肥大分化マーカーをリアルタイムRT-PCR法で検討したところ、Sox9ノックアウトES細胞に古典的Wntシグナル刺激しても肥大分化マーカーの上昇はみられなかった。このことから、Sox9依存性にWntシグナルは肥大分化を促進させていると示唆された。関節軟骨の病的な肥大化が原因であるとされる変形性関節症における古典的Wntシグナルの関与の解析を行っていく予定である。
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