2006 Fiscal Year Annual Research Report
脂質代謝異常および過凝固の観点からのステロイド性骨壊死の病態解析と予防法の開発
Project/Area Number |
18591665
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 卓明 九州大学, 大学院医学研究院, 助手 (20336035)
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Keywords | 骨壊死 / ステロイド / 脂質代謝異常 / 大腿骨頭 / 脆弱性骨折 / 病理組織 / 脂質代謝 / 凝固異常 |
Research Abstract |
1 骨壊死動物モデルを用いたステロイド性骨壊死の病態に関する研究 ステロイド単独投与家兎骨壊死モデルを用い、ステロイド剤の種類の違いによる壊死発生率に関して検討した。 【目的】大腿骨頭壊死はステロイド剤使用に伴って発生する重要な疾患の一つである。家兎においてステロイド剤の種類による骨壊死発生率の違いを検討した。 【方法】39羽の日本白色家兎に、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンを等力価で1回筋肉内投与した。投与後4週での大腿骨及び上腕骨の骨壊死発生率を解析した。 【結果】メチルプロドニゾロン投与家兎では、大腿骨近位における骨壊死発生率は他の2剤に比べて有意に高かった。血中脂質はメチルプレドニゾロン群で、投与後1〜2週で有意に高値を示した。 【考察】ステロイド剤の種類により骨壊死発生率が異なることが示唆された。 さらに、骨壊死予防の可能性について動物モデルで検討を行なった。高脂血症剤で現在、最も頻用されているスタチン製剤を用いた骨壊死予防実験を行った。スタチンを投与していない群の骨発生率が70%(12/30)であったのに対し、本薬剤を投与した群では37%(13/35)と有意に骨壊死発生率の低下を認めた。本動物モデルでの実験により、ステロイド投与による脂質代謝異常や凝固異常を制御することは、ステロイド性大腿骨頭壊死の発生予防の一助となる可能性が示唆された。本実験系における、具体的は骨壊死発生の抑制機序はまだ解明されていないが、凝固を抑制することに加え、抗高脂血症剤の薬理作用である抗酸化作用、高脂血症抑制、動脈硬化抑制などの関与が考えられた。 2 大腿骨頭壊死症と鑑別を要する疾患の大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折に関する研究 大腿骨頭壊死症と鑑別を要する疾患の一つとして、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折が提唱されている。我々は、本骨折の臨床病理学特徴を報告し、骨壊死との鑑別に有用な臨床および画像所見を提唱した。 さらに、臼蓋内側に発生した脆弱性骨折後に急速に股関節破壊が進行し、Protrusio Acetabuliを来した症例に関する報告も行なった。原因不明の疾患であるProtrusio Acetabuliの病因の一つとして臼蓋側に発生した脆弱性骨折を考慮しておく必要がある。 また我々は、SLEにてステロイド治療歴のある55才女性の脆弱性骨折症例を報告した。右股関節痛出現後3ヶ月のレントゲンで関節裂隙の狭小化と骨頭外側に圧潰像を認めた。MRIは骨髄浮腫像を示しており、脂肪抑制画像では圧潰に陥っている骨頭外側は高信号を呈していた。病理学的に骨壊死は認めず軟骨下脆弱性骨折と考えられた骨頭に圧潰を来す疾患として、SLE患者においても軟骨下脆弱性骨折を考慮しておく必要がある。
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