2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18591709
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
十時 忠秀 Saga University, 名誉教授 (20038722)
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Keywords | 局所麻酔薬 / 作用機序 / 神経毒性 / アポトーシス |
Research Abstract |
局所麻酔薬(以下LA)の可溶化作用が神経毒性機序のひとつであるとの我々の仮説を形態学的に証明することと、それとは別に毒性発現への関与が示唆されているLAのアポトーシス作用を調べることを最終年度の研究目的としていた。しかし、LAと同じように様々なNMDA拮抗薬もくも膜下腔に投与された場合に神経障害をきたし、その機序は可溶化作用による可能性があるという報告がAnesthesiology誌上(Yaksh TL, et al. 2008,108:938-49.)になされたのでその考えを裏付けられるかどうかを調べることにした。代表的なNMDA拮抗薬であるケタミンが可溶化作用を有するかどうかを調べるために、水溶液中で分子会合体を形成するかどうか及びヒト赤血球を溶血させるかどうかを調ベアミトリプチリンの結果と比較した。方法)分子会合体形成の有無はイオン電極法で調べた。また、ヒト洗浄赤血球と各濃度の薬剤を混合し10分間インキュベイトした後に遠心分離して得た上清液の吸光度(波長540nm)を測定することで遊離ヘモグロビン量を求め溶血の程度を評価した。 結果)アミトリプチリンの場合、0.4%以上で分子会合体形成が示唆された。ケタミンの場合、0.1~2.5%までの濃度において分子会合体は形成されないことが示唆された。0.3%以上のアミトリプチリンは完全に赤血球を溶血させたが、ケタミンの場合2.5%まで濃くしても溶血はほとんど認めなかった。 結論)アミトリプチリンでは神経障害を起こす濃度(0.3%)と分子会合体形成濃度と溶血を起こす濃度がほぼ等しいことから神経障害の機序の一つとして可溶化作用が考えられる。ケタミンは0.5%で神経障害を起こすと報告されているが、2.5%まで分子会合体を形成せず、溶血も起こさないことからその神経障害は可溶化作用によるものではないと思われる。
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Research Products
(1 results)