2008 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛における免疫系・知覚神経系間の情報伝達機構の解明
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18591717
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
伊吹 京秀 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 講師 (90232587)
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Keywords | サイトカイン / 情報伝達 / 中枢性痛覚過敏 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
研究の目的は免疫系と知覚神経系間の情報伝達機構の解明である。これまでの研究より、中枢神経系血管内皮細胞において、COX-2依存性に産生されるPGE_2が中枢感作を惹起し、炎症後期における中枢性痛覚過敏に深く関与すること、中枢神経並血管内皮細胞におけるCOX-2活性化に寄与する可能性のあるサイトカイン及び循環血中で情報伝達に関与する可能性があるサイトカインの存在などが示唆された。20年度は局所からの炎症情報を中枢神経系に伝達するサイトカインや局所で炎症刺激に応答して炎症情報を発現する細胞を正確に同定し、さらに炎症性サイトカイン受容体に注目して、中枢神経系における炎症性サイトカイン受容体の局在、受容体発現細胞の同定を行うことも目標とした。結果、炎症局所では炎症発症に伴いマクロファージ様の細胞でIL-1betaが産生されまたIL-6の血中濃度が炎症発症に伴い著増していた。さらに中枢神経血管内皮細胞が、炎症情報伝達の場であると同時に細胞内でCOX-2依存性にPGE_2を合成し、末梢性炎症に伴う発熱、全身倦怠、痛覚過敏などの中枢神経系の関与する症状を惹起する原因となっている可能性が高いという結果が得られた。またIL-6に対する抗血清を全身投与すると、中枢神経系血管内皮細胞において、各種サイトカインにより活性化される転写促進因子であるSTAT3の活性が抑制されること、COX-2、mPGESの登現、PGE_2産生が抑制されること、炎症性痛覚過敏が緩和されることが証明された。しかし局所に発現していたIL-1beta産生を阻害しても中枢神経系における炎症性変化は抑制されず鎮痛作用もなかった。これらより、IL-6などの分子が、血行性に中枢神経血管内皮細胞まで炎症情報の伝達を行っている可能性が強いことが示唆された。今後炎症性疼痛治療の一つの標的として血管内皮細胞、各種サイトカインに注目すべきであろう。
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