Research Abstract |
プロテインCインヒビター(PCI)は主として肝臓,腎臓,及び精巣,卵巣などの生殖臓器で発現されるヘパリン結合性のセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)である。血漿PCIは,主として抗凝固セリンプロテアーゼの活性化プロテインC(APC)の阻害因子として機能し,尿中PCIは,尿プラスミノゲンアクチベータ(uPA)の阻害因子として機能するが,それらに対する阻害活性はヘパリンにより著しく促進される。我々は,これまでに,PCIがuPAを阻害することにより種々の癌細胞のin vitroでのマトリゲル浸潤能を阻害すること,また,種々の癌細胞のin vivoでの増殖,転移を抑制し,それらの抑制活性はPCIのプロテアーゼ阻害活性に依存しないこと,さらにはPCIが血管新生を抑制し,その抑制活性もそのプロテアーゼ阻害活性に依存しないことを明らかにしてきた。そこで,本年度は,PCIによる血管新生抑制機序の解明を目的として,血管内皮細胞の管腔形成を指標として,PCIの血管新生抑制活性に関して,その他の血管新生抑制性のヘパリン結合性セルピンと比較するとともに,Western blot法を用いてヘパリン存在,非存在下における血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor:VEGF)誘導性のMAPK(Mitogen-activated protein kinase)のリン酸化に及ぼすPCIの影響に関して検討した。その結果,PCIはこれまでに血管新生抑制活性が報告されているヘパリン結合性セルピンのアンチトロンビン(プロテアーゼによる切断型)やpigment epithelium-derived factor(PEDF)と同程度の血管新生抑制活性を有すること,及びPCIは,ヘパリン存在下でのVEGF誘導性のMAPKのリン酸化を特異的に阻害することが明らかになった。 以上の結果より,PCIの血管新生抑制活性は,アンチトロンビンなどと同様に,そのヘパリン結合性に起因する可能性が示唆された。
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