2006 Fiscal Year Annual Research Report
過活動膀胱の発生機序に関する研究-高脂血症と膀胱虚血の影響について-
Project/Area Number |
18591759
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉田 正貴 熊本大学, 大学院医学薬学研究部, 助教授 (20201858)
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Keywords | 過活動膀胱 / 膀胱平滑筋 / 膀胱知覚 / 膀胱虚血 / 高脂血症 / 尿路上皮 / アセチルコリン / ATP |
Research Abstract |
【目的】過活動膀胱(OAB)の発症には膀胱虚血の関与が示唆されている。我々はこれまでWatanabe Heritable Hyper-Lipidemic rabbit (WHHLウサギ)の下部尿路機能について検討し、24月齢のWHHLウサギでは内腸骨動脈の内腔の狭小化が見られ膀胱虚血の状態にあること、またこのウサギは排尿筋過活動状態にあり、OABの発症メカニズムの検討に有用である可能性を指摘した。本年度の検討ではWHHLウサギにおける排尿筋過活動の発症過程を観察するとともに、神経線維の免疫組織学的検討を行った 【対象と方法】6月齢(3羽)、12月齢(3羽)および24月齢のWHHLウサギ5羽(WHHL群)とそれぞれ同年齢の日本白色家兎6羽(対照群)を用いた。FVC、麻酔下膀胱機能検査、摘出膀胱平滑筋条片を用いての機能実験を行った。また、神経染色として、S-100蛋白(運動神経)ならびにCGRP陽性神経(知覚C線維)の免疫組織学的検討をおこなった 【結果】各月齢のウサギにおいて、体重、腎機能、一日尿量、血液パラメーターのうちWHHL群で高コレステロール血症を認める以外両群間で差はなかった。WHHL群は対照群に比して12月齢のウサギより排尿回数の有意の増加と1回排尿量の有意の減少が見られ、膀胱機能検査でも、12月齢よりWHHL群で排尿間隔の短縮と1回排尿量の減少、およびpremicturition contractionが認められた。膀胱平滑筋条片の機能実験では、6月齢および12月齢のWHHL群でcarbacholおよび経壁電気刺激収縮による反応性の増強が、24月齢では逆に減弱が観察された。S-100蛋白陽性神経は主に平滑筋層内に見られ、6月齢のWHHL群では対照群に比較してすでに減少が観察された。またCGRP陽性神経は主に上皮下に認められ、12月齢のWHHL群では増加傾向が、24月齢では有意の増加が観察された。 【結論】今回の検討で、WHHLウサギは6月齢から運動神経の部分的除神経とそれに伴う膀胱平滑筋の除神経後過敏反応が見られることが明らかとなった。また、12月齢以降には知覚C線維の活性化も示唆されるようになり、これが排尿筋過活動に関与している可能性が推察された。今回の結果は、虚血や加齢などに伴うOABの発症過程の一端を明らかにしたものと考えられる。
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