Research Abstract |
平成15年4月〜平成20年3月までに,妊婦1500例に対して妊娠16〜23週に子宮動脈血流速度波形計測を行った。妊娠20〜23週,妊娠28〜29週および妊娠37週の採血時に,各々1358例,916例,365例に妊婦より10mLの採血を行い,血清および血漿を分離し,-20℃で保存した。これらのコホートを用いて以下3つの研究成果が得られた。(1)初期コホート587例についての検討から,妊娠中期(妊娠20週前後)の子宮動脈血流速度波形notch depth index(NDI)上昇(深いnotch)と妊娠中期の高血圧前症/高血圧を用いたスクリーニングにおける妊娠高血圧腎症(以下PE)発症予知の感度(84%)は,各々単独でのスクリーニングに比べて(各々53%,63%),PE発症予知の感度を大きく上昇させることを明らかにした。(2)妊娠16-23週に子宮動脈血流速度波形計測を行い,かつ,妊娠16-23週,27-29週で血清PIGF,sFlt-1値を測定した単胎妊婦コホート261例についての検討から,妊娠中期に子宮動脈血流速度波形のノッチの深さが深い症例(NDI増加例)では,妊娠中期の血清PIGF値がすでに低値を示していること,また,妊娠中期にNDI増加及びPIGF低値を示した群は,妊娠28週前後の血清sFlt-1高値を示す割合とPE発症率が最も高いことを明らかにした。(3)妊娠20-23週,27-30週,及び36-38週で採血した正常妊婦85名の血清を用いて,妊娠20-38週の血清soluble endoglin(sEng)正常域を決定した。さらに,早発型PEでは,疾患発症後sEngは全例(25/25)高値(≧95%値以上)を呈したこと,また,将来早発型PEとなった妊婦では,妊娠16-23週において全例(5/5)がsEng高値を呈していたことを見出した。
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